ベースとなる「陰陽思想」
月が陰で日は陽、夜が陰で昼が陽、女が陰で男が陽というように、自然界のすべての事象には陰と陽がある、という陰陽思想は、漢方理論のベースになる考えです。陰と陽は相対的なもので、互いに相反したり、入れ替わったり、補いあったりしながら常にバランスをとっています。
たとえば、季節も陰陽の移り変わりで起こると考えます。一年のうちで陽が極まるのが夏至、そこから冬に向け陽が減り陰が増していき、陰が極まるのが冬至です。一日の中にも同じように陰陽の移り変わりがあります。
人間も自然界の一部。体内が陰で体表が陽、腹側が陰で背側が陽、下半身が陰で上半身が陽など、さまざまな陰陽があります。その陰陽のバランスがどちらかに傾いてくずれたときに、体調もくずれると考えるのです。
すべてを五つに分類する「五行学説」
陰陽思想とともに、漢方理論の大きな柱となっているのが五行学説。自然界のすべてを「木・火・土・金・水」という5つの物質(五行)のグループにあてはめて分類する考えです。
五行は相互に関係します。それをあらわしているのが左の図で、右回りの矢印が相生、対角線の矢印が相剋の関係を示します。矢印をたどってみましょう。相生は、木は燃えて火を生み、火が燃えてできた灰は土となり、土から金が産出し、冷えた金属の表面に水滴がつき、水は木を育てるという、相手を生み出し助ける関係。相剋は、木は土から養分を奪い、土は水を埋め、水は火を消し、火は金属を溶かし、金属は木を切り倒すという、相手を抑制する関係です。
五行論は漢方医学の経験、知識と密接に関連づけられ、診断や治療に応用されます。
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎
【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝
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公開日:2024.12.02