天然資源に恵まれるアフリカが、なかなか成長できなかったのはなぜ?【図解 地理と経済の話】
今も残る植民地時代以来の経済構造
アフリカには素晴らしい大自然や人類発祥の地というポジティブなイメージもありますが、一方で貧困や飢餓といったネガティブなイメージも付きまといます。実際、鉱物資源に恵まれていて、鉄鉱石や石炭・石油などの化石燃料、希少性の高い金やダイヤモンド、レアメタルなど、その埋蔵量は世界的に見ても指折りです。にもかかわらず、貧困から抜け出せずにいるのはなぜでしょうか。
その理由のひとつに、資源の産地の偏りがあります。資源を持つ国や民族と、それを持たぬものとの間で紛争が起きたのです。200万人の死者を出すに至ったナイジェリアのビアフラ戦争や、22年間続いた第二次スーダン内戦は、民族・宗教対立が際立っていますが、石油をめぐる利権争いもありました。つまり、アフリカの中での一致団結ができてこなかったのです。
特定の一次産品の生産や輸出に依存する、植民地時代以来のモノカルチャー経済も問題視されています。アフリカを原料供給地と見なすヨーロッパの宗主国によって主導されてきた経済システムで、不作や価格変動に左右されやすく、収入が安定しないのです。
眠れる多くの資源を有効活用するという以前に、先進国は構造的貧困に悩むアフリカに対してフェアな開発支援を行う必要があります。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
著者:井田仁康
著者プロフィール
井田仁康:筑波大学名誉教授。博士(理学)。1958 年生まれ。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任し、日本地理学会理事。筑波大学第一学群自然学類卒。筑波大学大学院地球科学研究科単位取得退学。社会科教育・地理教育の研究を行っている。著書や編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)、『世界の今がわかる「地理」の本』(三笠書房)などがある
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昨今、地理的条件から政治を分析する「地政学」が注目を集めています。国土の形や立地、隣国との位置関係や気候などから、政治的・軍事的な影響を研究する学問で、世界情勢を紐解くうえで欠かせない考え方といえます。実は、地理は政治だけでなく、経済にも大きく関わっています。一見繋がりが見えにくい地理と経済の話ですが、
・インドでIT産業が特に発展したのはなぜ?・天然資源に恵まれたアフリカがなかなか成長できなかったのはなぜ?・中国やインドに続いて今後さらに伸びていく国はどこ?・中東で大量の石油が採れるのはなぜ? これらはすべて「地理」で説明ができます。今の世界情勢からこの先世界がどう動いていくかまで、世の中の流れがわかるようになる「経済地理学」が面白く学べる一冊です!
公開日:2024.10.07