小さな島に日本が750億円も費やしている理由【図解 地理と経済の話】
日本最南端の島の存在感
日本の最南端は沖縄県にあらず、小笠原諸島にある沖ノ鳥島です。住所は東京都小笠原村ですが、東京都心からは1700㎞離れています。緯度は北緯20度25分で、ハワイのホノルルよりさらに南。気候も日本には珍しい熱帯です。
沖ノ鳥島の最大幅は東西4.5㎞で、南北1.7㎞です。この島はサンゴ礁が環状に連なった環礁という特徴があり、満潮になるとその大部分が海に沈み、東小島と北小島のふたつの島が1mほど海面に顔を覗かせます。
そんな小さな島に対し、日本政府は波に削られ消えてしまわないよう護岸工事を施したり、消波ブロックで周囲を囲んだりと懸命な保全活動を行っています。これまでにかかった費用は750億円。なぜそれほどの大金を投じなければならないのでしょう。それは、沖ノ鳥島が失われると、この島を根拠とした排他的経済水域(EEZ)も同時に失われてしまうからです。その広さは約40万㎢と、日本の国土の約38万㎢を上回ります。沖ノ鳥島は国際的に認められた日本固有の領土であり、法律上の定義においても島と定められています。どんなに小さくとも、私たちの大切な国土です。しかし、人の住めない岩は排他的経済水域を有しないという海洋法の定義を根拠に、これを認めない国も一部には存在します。
日本の排他的経済水域
・沖ノ鳥島が海に沈むと、日本は約40万㎢の排他的経済水域を失うことになる。そのため、護岸工事など懸命な保護措置が講じられている。
排他的経済水域とは
沿岸国が、天然資源の開発など経済的活動についての主権的権利と、海洋の科学的調査などについての管轄権を有する水域。領海の基線(低潮線=海面が最も低いときの陸地と水面の境界線)から200海里(約370㎞)までの海域。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
著者:井田仁康
著者プロフィール
井田仁康:筑波大学名誉教授。博士(理学)。1958 年生まれ。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任し、日本地理学会理事。筑波大学第一学群自然学類卒。筑波大学大学院地球科学研究科単位取得退学。社会科教育・地理教育の研究を行っている。著書や編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)、『世界の今がわかる「地理」の本』(三笠書房)などがある
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昨今、地理的条件から政治を分析する「地政学」が注目を集めています。国土の形や立地、隣国との位置関係や気候などから、政治的・軍事的な影響を研究する学問で、世界情勢を紐解くうえで欠かせない考え方といえます。実は、地理は政治だけでなく、経済にも大きく関わっています。一見繋がりが見えにくい地理と経済の話ですが、
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公開日:2024.10.18