「EUに加盟する」ってどういう意味があるの?【図解 地理と経済の話】
ヨーロッパが一体となって前進
ヨーロッパ諸国はアメリカやロシア、中国などが軍事・経済面で大国化していくなか、国単位ではこれに対抗することが難しくなりました。そうした状況から生まれたのが、ヨーロッパ統一という考え方です。1958年のEEC(欧州経済共同体)からはじまった地域統合の流れは、EC(欧州共同体)の時代を経て、1993年にEU(欧州連合)として結実します。
政治的結びつきを強めたEU諸国は、共通政策をとることで足並みをそろえます。輸出入に関する制限をなくしたり、パスポートなしの往来を認めたりと、人と物の出入りを自由にしたのもその一環。そして統一通貨ユーロの採用により、共同体としての姿勢はいっそう明確になりました。しかし、統合を強めることに不満を抱く加盟国やその国民もいます。
実際にイギリスでは、EUのルールに従うことで自国の主権が制限されているなどと不満を持つ国民が増えました。そのため、EU離脱の是非を問う国民投票が2016年に行われ、離脱を望む国民が多数を占めたのです。その結果を受けて、イギリスは2020年にEUを離脱しました。
統合によるデメリットはありますが、政治的な垣根がなくなったことによるメリットが大きいのも確かでしょう。
※現在の加盟国は27カ国。イギリスも加盟していたが2020年に離脱した。加盟候補国は9カ国で、ロシアと戦争中のウクライナもそのひとつ。
ヨーロッパ統合のあゆみ
※統一通貨ユーロ:EUの統一通貨。加盟27カ国のうち20カ国で使用されている。自国通貨を使っている残りの7カ国にも、将来の採用義務がある。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
著者:井田仁康
著者プロフィール
井田仁康:筑波大学名誉教授。博士(理学)。1958 年生まれ。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任し、日本地理学会理事。筑波大学第一学群自然学類卒。筑波大学大学院地球科学研究科単位取得退学。社会科教育・地理教育の研究を行っている。著書や編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)、『世界の今がわかる「地理」の本』(三笠書房)などがある
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昨今、地理的条件から政治を分析する「地政学」が注目を集めています。国土の形や立地、隣国との位置関係や気候などから、政治的・軍事的な影響を研究する学問で、世界情勢を紐解くうえで欠かせない考え方といえます。実は、地理は政治だけでなく、経済にも大きく関わっています。一見繋がりが見えにくい地理と経済の話ですが、
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公開日:2024.10.21