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昔は羊はいなかった?!オセアニア地域で、今では人口より羊が多く盛んな「羊ビジネス」が生まれた理由とは?【図解 地理と経済の話】

Text:著者:井田仁康

羊のいない国で羊ビジネスが生まれた理由【図解 地理と経済の話】

乾燥地帯が高級ウール用の羊に最適

オセアニア地域は羊毛(ウール)生産地として有名で、オーストラリア、ニュージーランドともに羊の飼育が盛んに行われています。近年は中国、インドの躍進が著しいものの、依然として世界で指折りの羊毛供給地域です。両国の2022年の羊の飼育頭数はそれぞれ7000万頭、2500万頭を超えています。オーストラリアは人口2660万人(2024年)、ニュージーランドは512万人(2021年)で、人間より羊のほうが多いのです。

羊のいない国で羊ビジネスが生まれた理由【図解 地理と経済の話】

このうちオーストラリアは、飼育頭数が世界3位、羊毛生産量が中国に次ぐ2位、羊毛輸出量が1位と堂々たる成績。特筆すべきは、ライバルである中国を最大の輸出相手としていることでしょう。そんな羊大国のオーストラリアも、ニュージーランドも、昔から羊がいたわけではありません。イギリスの植民地だったころ、本国へ羊毛や羊肉を供給するために飼われるようになったという歴史があるのです。

オーストラリアの国土の大半は乾燥地帯ですが、その半分近くを牧場や牧草地として利用しています。乾燥地帯では牧草の生育はよくありませんが、ウール用の羊のうちでも最も優れたメリノ種の生産には適しています。そのため、オーストラリアは高級メリノウールの代表的な産地となっています。

羊のいない国で羊ビジネスが生まれた理由/乾燥地帯が高級ウール用の羊に最適【図解 地理と経済の話】

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
著者:井田仁康
著者プロフィール
井田仁康:筑波大学名誉教授。博士(理学)。1958 年生まれ。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任し、日本地理学会理事。筑波大学第一学群自然学類卒。筑波大学大学院地球科学研究科単位取得退学。社会科教育・地理教育の研究を行っている。著書や編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)、『世界の今がわかる「地理」の本』(三笠書房)などがある

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昨今、地理的条件から政治を分析する「地政学」が注目を集めています。国土の形や立地、隣国との位置関係や気候などから、政治的・軍事的な影響を研究する学問で、世界情勢を紐解くうえで欠かせない考え方といえます。実は、地理は政治だけでなく、経済にも大きく関わっています。一見繋がりが見えにくい地理と経済の話ですが、
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