胃液や胃酸の逆流による粘膜への刺激による痛み
暴飲暴食をしたり、脂っこいものを食べたときにみぞおちから胸のあたりにかけて食道がチリチリと焼けつくような痛み、違和感を感じることがありますが、これが「胸焼け」です。
この症状は胃の入り口にある噴門の「下部食道括約筋」が開いて、食塊とともに胃液や胃酸が逆流し、食道などの粘膜を刺激することが原因です。
胃は本来、食べものが入ると噴門が閉じて逆流を防ぐしくみになっています。ところが、食べ過ぎなどで消化に時間がかかると、胃の中で渋滞が起こります。そのとき下部食道括約筋の締まりが緩くなっていると、逆流して「胸焼け」を起こしてしまうのです。
このような症状を、「胃食道逆流症(GERD)」と呼びます。GERDには、食道粘膜にびらんや潰瘍がみられるものとみられないものがあります。内視鏡検査で異常な病変がみられるものを「逆流性食道炎」といい高齢者や肥満の人に多くみられます。
一方、食道粘膜に病変がみられないものを「非びらん性胃食道逆流症」と呼び、こちらは比較的若く痩せ型の女性に多いという傾向があります。
GERDは、肥満や妊娠中、便秘などで内臓に常に圧力がかかっている場合になりやすく、空腹時や夜間の胸焼けが特徴的症状です。喉の違和感や声がれ、胸の痛み、咳など、食道以外での症状がみられることもあります。
また、食道の粘膜は、胃の粘膜と違い、胃酸の刺激から身を守るしくみを持っていないので、逆流性食道炎が繰り返されると「バレット食道」になり、バレット腺がんという食道がんになる可能性もあります。
脂っこいものを摂ると胃酸の分泌を促進しますので、低脂肪食をとること、禁煙、節度ある飲酒など生活習慣の改善も必要です。
出典:『図解 人体の不思議』監修/荻野剛志
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 人体の不思議』
監修:荻野剛志
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公開日:2021.10.13