昨年2月に自動車事故
世界ゴルフ殿堂入りを果たした元世界ランキング1位のタイガー・ウッズが、フロリダ州ポンテベドラビーチで行われた記念式典で、感極まって涙をこぼす一幕があった。
「今、あなたは殿堂入りを果たすだけでなく、今、自分の足でここに立っているのです。あなたはファイターだからです」
娘サムのスピーチは、身内以外の人々にとっても胸にジンと響くものがあった。
昨年2月、タイガーはカリフォルニア州ロサンゼルス近郊で自動車事故を起こした。時速45マイル(約72キロ)に制限されているカーブを、84~87マイル(約135~140キロ)のスピードで突っ込んでいったことが原因だった。ブレーキとアクセルを踏み間違えた疑いも持たれた。
この事故でタイガーは両足を複雑骨折と粉砕骨折する重傷を負った。
これについて本人は「フィフティ・フィフティで片足を失っている可能性があった」と語っている。娘がスピーチで述べたように「今、自分の足でここに立っていること」が既にして奇跡なのかもしれない。
タイガーは、事故を起こしてこれまで何度も警察の世話になっている。09年12月には、運転前の飲酒が原因で衝突事故を起こした。後に、この事実を明かしたのはエリン元夫人(10年に離婚)だった。
17年5月には飲酒運転と薬物使用の疑いでフロリダ州パームビーチ郡の警察に連行された。
調べに対し、タイガーは「アルコールは摂取していない。処方された(腰痛の)複数の薬を服用したところ、予想もしなかった強い副作用が出てしまった」と語った。
警察が提供した動画には、呂律が回らず、目もうつろ。真っすぐに歩けないタイガーの姿が映っていた。しかも後ろ手に手錠が。自業自得とはいえ、世界に向け、ここまでスーパースターをさらし者にする必要があったのか。
米国のメディアはスーパースターの栄光と挫折の物語を好む。特にタイガーのような黒人選手に対しては、上り調子の時には、アメリカン・ドリームのように扱うが、ひとたびスキャンダルを起こすと、“水に落ちた犬は叩け”とばかりに猛烈なバッシングを展開する。
自らへの人種差別についてはタイガーも古くから認めており、「マスターズに勝ちたい。黒人はあそこにいるべきじゃないと言われてきた」とも語っている。
タイガーは仏教徒である。彼は現世において“輪廻転生”にも似た復活劇を繰り返してきた。奇跡を待ちたい。
(初出=週刊漫画ゴラク2022年3月25日発売号)