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アメンボが水面に浮いていられるワケは?【物理の話】

Text:長澤光晴

足先の脂と表面張力

アメンボは、流れの緩い川や公園の池などで水面を滑るように動き回っている昆虫です。多くの虫が、何かの拍子で水面に落ちると脱出できないのに、アメンボが大丈夫なのはなぜでしょうか?これには、水の表面張力が大きく関係しています。

アメンボの足の先には、たくさんの細かい毛が生えています。この細毛には、アメンボのからだから分泌される脂がつけられています。脂は足に水が付着する力をなくして(乾いた状態にして)、水をはじきます。

泳いでいるアメンボの足の部分を見ると、水面が少し凹んでいることがわかります。凹んだ水面は平らな水面より面積が大きいので、水は水面を平らな状態に戻そうと表面張力を働かせます。表面張力をすべて足し合わせた力(合力)は、上向きの成分だけが残ります。合力とアメンボの足にかかっている荷重と、つまり、アメンボの体重は水の表面張力によって支えられているのです。

では、足の先の脂が洗剤などの界面活性剤によって洗い流されてしまうと、どうなってしまうのでしょうか?

そうなると、アメンボの足は水に濡れて水面にくっついてしまいます。これでは、表面張力が働きませんから、水中に沈むことになります。

異変に気づき、水面から脱出すべく飛び上がっても、足に水が付着して水面が盛り上がるばかりです。こんどは表面張力が足を水面へ引っ張る方向に働くのです。

この力に勝てなければ、ほかの小さな虫と同様、水面から自由になれません。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。

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