患者ではなくクライエント
公認心理師には、『公認心理師法』の第2条によって4つの業務が定められています。第2条を要約すると、「要心理支援者の心理状態の観察とその結果の分析を行う」「要心理支援者の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行う」「要心理支援者の関係者の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行う」「心の健康に関する知識の普及を図るための教育および情報の提供を行う」となります。
「要心理支援者」というのは、心理に関する支援を要する人、つまり心の病気を抱えている人のことを指し、これを心理職の専門家は「クライエント」と呼びます。患者ではなくクライエントと呼ぶ理由は、クライエントには「自発的に支援を受ける人」という意味があり、クライエントの自主性を尊重し、共感することでともに歩みながら心の問題を解決していこうという考え方が基になっています。
ひとつ目の業務である、クライエントの心理状態の観察とその結果の分析というのは、「心理的アセスメント」と呼ばれるものです。公認心理師はクライエントとの面接や観察、発達検査、知能検査などの心理検査などを通して、クライエントをさまざまな視点から捉え、人格や置かれている状況、想定される要因などの情報を収集して分析し、その結果を用いてクライエントが抱えている問題を理解することが求められます。これが、心理療法を行うための土台となり、その後の介入方針が決まります。
ふたつ目の業務、クライエントの相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うというのは、「心理相談」や「カウンセリング」と呼ばれるものです。公認心理師はクライエントが気になっていることや苦しんでいること、迷っていることなどをしっかり聞いて相談に乗り、必要に応じて適切な心理療法やさまざまな心理的介入を行います。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』監修/湯汲英史
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』
監修:湯汲英史
ADHDや学習障害、統合失調症やパニック障害などの言葉を耳にする機会はありますが、なんとなく心やメンタルの不調・病気と捉えてしまいがちな臨床心理学の分野。しかし紐解いていくと実はそれぞれの症状には特性や原因があり、子どもが抱えやすいのものから大人が抱えやすいものまで様々です。また、ストレスが原因で自分では気づかないうちに発症してしまうものも。本書ではそんな一見理解し難い「心の問題」の特性や症状を図解でわかりやすく解説します。最も大切なことはしっかりと特性を理解して自分と、そして他人と向き合うことです。「自分は他人がふつうにできることができない」「職場のあの人はどうも変に感じる」「子どもがじっとしていてくれない」こうした日常のもやっとした感情も、臨床心理学を知ることで理解が深まります。また、実際に現場で心の病気を抱えた人と向き合う公認心理士師の仕事についても紹介します。臨床心理学を通して「心の問題」について知ることで、自分や他人の特性がわかり、周囲と上手に付き合っていく方法を知ることができる一冊です。
公開日:2023.05.06