サルコペニアとフレイルとは?
“サルコペニア”は、筋肉(主に骨格筋)が量的にも質的にも減少し、筋肉が低下して移動が困難になった状態を指します。ヨーロッパで栄養学や老年医学に取り組む学会の作業部会が2010年に提唱した概念で、「歩行速度1m/秒未満」「握力→男性28kg未満、女性18kg未満」であればサルコペニアの可能性があります(2019年改定)。
原因は加齢による骨格筋の変化、つまり筋断面積の減少、速筋線維の減少、筋肉のエネルギー源であるミトコンドリアの活性低下、酸化ストレスの増大などが挙げられています。サルコペニアの治療・予防には、栄養(高タンパク食→0.8g/kg/日・ビタミンD)と運動(レジスタンス運動、有酸素運動)が必要となります。
一方、“フレイル”は英語の「frailty」が語源で、日本語では「虚弱」と訳されています。「身体だけでなく、心理的にも社会的にも衰えた状態」を指します。①体重の減少、②歩行速度の低下、③握力の低下、④疲れやすい、⑤身体活動量の低下、のうち3項目以上を満たすとフレイルと診断されます。
フレイルの高齢者は、要介護になりやすいという状態にあります。入院や施設入院を防ぐためには早期の診断によって、適切な介入を受けることが重要です。フレイルの原因は、前述のサルコペニアだけではなく、個人の生活環境や人とのかかわりが影響してきます。また、糖尿病や心不全、骨粗鬆症などの疾患もフレイルの原因になります。そのため、フレイルを防ぐには、「充分な栄養の摂取」「適度な運動」「積極的な社会参加」「併発症の管理」など、本人の自覚はもちろん、家族などの包括的な介入が必要になります。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修
高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。
公開日:2023.05.09