今秋のドラフトの超目玉
高校球児がスポーツ紙の一面を飾るのは稀である。
<衝撃3発 場外! 場外!! 場外!!! 麟太郎>(スポーツニッポン6月4日付け)
さる6月3日、花巻東高(岩手)の佐々木麟太郎が、愛知県小牧市で行われた招待試合で、強豪の東邦高、愛工大名電高の3投手から、2打席連続を含む3本の場外ホームランを放った。
これで高校通算133号。今秋のドラフトの超目玉だ。
この試合をネット裏から見ていた広島・松本有史スカウトに動画を見せてもらった。バットを小刻みに動かしてタイミングを取る姿は、まるでMLB通算762本塁打のバリー・ボンズのようだ。
3本の内訳は、ライトが1本、右中間が1本、左中間が1本。右中間への1本は、プロ注目の東邦・山北一颯から。愛工大名電戦でのレフトフェンス直撃の2ベースも、ドラフト候補の宮國凌空から奪ったものだった。
松本の感想。
「(高校通算111本塁打の)清宮幸太郎の高校時代より上だと思います。初球から打ちに行く姿勢がいい。金属バットの影響? いやバッティングが柔らかいから(プロに入って)木製でも十分いけると思いますね」
身長184センチ、体重113キロの巨漢。かつて、この手の肥満タイプは足が遅い、守るところが少ない、故障のリスクがある――などを理由にドラフトでは過小評価されがちだった。
しかし近年、自らを“動けるデブ”と称する中村剛也(埼玉西武)や山川穂高(同)の活躍もあり、肥満を理由に指名を見送る球団は少なくなってきた。
特にDH制のあるパ・リーグの場合、肥満はさしてネガティブな材料にはならない。今秋のドラフトでは1位指名が重複するはずだ。
こんな声もある。
「確かに太り気味と言えば太り気味だが、どっしりとした下半身を見ればわかるように、計画的な筋トレの成果が、あの体。父親が監督ということもあり、練習熱心で、一切手を抜かない。また先輩の菊池雄星(ブルージェイズ)や大谷翔平(エンゼルス)の活躍も励みになっているはず。本人は日本のプロ野球にとどまらず、MLBのホームラン王を目指す、という大志を抱いているようです」(在京球団東北地区担当スカウト)
麟太郎は、まだ甲子園では結果を残していない。昨年春、花巻東は初戦で市立和歌山高と対戦し、4対5で敗れた。麟太郎は4打数無安打に終わった。それだけに最後の夏にかける意気込みは、ひとしおだろう。ぜひお見逃しなく!
初出=週刊漫画ゴラク2023年6月23日発売号