単純計算では38・4センチ
昔の人は、土地の面積を坪という単位で表記していた。
ちなみに1坪は約3・30578平方メートル。「100坪の豪邸」と聞いても、若い人はピーンとこないだろうが、330・578平方メートルと言い直せば、おおよその広さが理解できるはずだ。
同じように、昔の人の中には、文(もん)という単位を使うものもいる。これは中国の通貨の直径に由来するもので、1文はおよそ2・4センチ。10文で24センチだ。
私たちの世代にとって、文と言えば16文キック、すなわちジャイアント馬場だ。
単純計算すれば、馬場の足のサイズは38・4センチということになる。
いくら馬場が“大足”だからと言っても、38・4センチは大き過ぎるのではないか。
実際、馬場の足のサイズは、どれくらいだったのか。今さら故人の足のサイズを測ることはできない。
そこで自著『たまにはオレもエンターテイナー』(かんき出版)から引く。
<オレの足の大きさがほんとうに十六文かというと、これがオレにはよくわからないんです。オレの片足あげてのカウンター・キックが、いつごろから十六文キックと呼ばれるようになったのかも、オレ自身、はっきりしません>
本人が「オレにはよくわからない」というのだから、それ以上、調べようがない。
ただし、「16」という数字には見覚えがある、と馬場は述べている。
<アメリカで買ったタウン・シューズをはいていたんですが、その靴の裏に、「16」というラベルが貼ってあったんですよ。十六インチということでしょうね。それを見た新聞記者が、オレのカウンター・キックを、十六文キックと名づけたのだろうと思いますよ>(同前)
1インチは2・54センチ。ということは16インチで40・6センチ。16文より、さらにデカくなってくるではないか。
これもありえない話だ。憶測だが、アメリカには靴のサイズを表すインチ以外の別の単位があるのだろう。それを馬場はインチと錯覚した可能性が高い。
写真に残っている靴を分析したところ、実際には34センチ前後だったと見られている。それでも“大足”であることに変わりはない。
ここまで書いてきて言うのも何だが、34センチだろうが38・4センチだろうが、あるいは40・6センチだろうが、実際のサイズはどうでもよかったのではないか。“16文キック”という、あの唯一無二のネーミングが、馬場を“東洋の巨人”たらしめたのだから…。
初出=週刊漫画ゴラク2023年10月13日発売号