明日5月5日から二十四節気は立夏(りっか)です。
爽やかで気持ちよい新緑と風。暦の上では夏のはじまりです。
立夏 節の話
木々の隙間から降り注ぐ木漏れ日は、美しい光のかけらとなってそこかしこに。しなやかに風に揺れ、青々ときらめく草木たちからは生命の息吹があふれています。
リンゴのような甘い香りがするカモミールは、ちょうどこの季節の植物。キク科シカギク属、和名はカミツレです。観賞花やハーブティー、精油など、多方面で活躍する万能ハーブで、主に薬用とされている品種には、ジャーマンカモミールとローマンカモミールの2種類があります。
花が咲いたときに花の中心の黄色い部分、花托(かたく)が盛り上がり、花弁(かべん *花びら)がそり返った姿になるのはジャーマンカモミール。背丈も30センチほどになり、切り花としてアレンジしやすいのはこちらです。
ローマンカモミールは、平べったい花托で、ジャーマンより背丈が小さめ、花壇や通路の土部分を隠すグランドカバーとして活用されています。
ハーブティーとして飲まれているのは、ほとんどがジャーマンカモミール。鎮静、鎮痙(ちんけい)作用にすぐれ、ストレス性の胃炎や不眠、女性特有のホルモンバランスの乱れから生じる冷え性、生理痛など、不調を和らげる救世主のような存在です。
精油としては、ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、どちらもあります。薬草のような独特な香りがするジャーマンカモミールの精油は、鎮静、抗炎症作用にすぐれ、目の覚めるような青い色をしています。この色は抗炎症作用の強いカマズレン(アズレン)という特徴成分の色。この成分は生花にはなく、精油を抽出する蒸留の過程で、生花中のマトリシンという成分が変化して鮮やかな青色のカマズレンになるのです。物質が変化していく過程はとても美しく、深く心を動かされます。
一方、ローマンカモミールの精油は、生花と同じような甘くやさしい香りで、ほぼ透明。主にリラックス目的で使われます。
カモミールには私も多くの場面で助けてもらっています。胃に不快感があるときは、濃いめに煮出したカモミールティーを飲んでごろごろと寝転がり、肩や腰が痛いときは、精油を混ぜたボディオイルでマッサージ。肌荒れが気になるときは、顔を洗ってすぐに芳香蒸留水(フローラルウォーター *注1)をたっぷり手に取って顔から体までしっかり浸透させます。
花市場で見かけると自然と手が伸びてしまうカミモール。甘い香りと華奢(きゃしゃ)で可憐な姿に潜む、はかり知れないパワーに、私自身がすっかり魅了されているのでしょう。
ハーブを使った暮らしのアイデアを2つご紹介します。
【暮らしのアイデア】 ブレンドして相乗効果カモミールハーブティー
やさしい風味のジャーマンカモミールと好相性のハーブをブレンドしたお茶はいかがでしょう。
黄色いカモミールに合わせたのは3種。
右上はルイボス。ビタミン、ミネラルが豊富で抗酸化物質を多く含みます。右下は女性ホルモンを整えるレディスマントル。左上はペパーミント。消化を助ける効能面でもとても相性がよいハーブです。
【暮らしのアイデア】 緑のグラデーションが新鮮心安らぐハーブの花束
多くのハーブが旬を迎える初夏。目にやさしく、香りもすがすがしいハーブだけの花束は、この時季ならではのスペシャルブーケです。
緑の花束を作るコツは、色合いや姿形が少しずつ異なるものを組み合わせること。爽やかな黄緑のゼラニウムをメインにしたら、濃緑のローズマリーは少なめに、といった具合に。シルバーがかったマットなユーカリは、実つきを選ぶと全体に空気感がプラスされます。
禁忌 カモミールのハーブティーや精油は、キク科アレルギーの方は使用を避けてください。詳しくは『二十四節気 暦のレシピ』巻末P.214~220を参照してください。
(注1)芳香蒸留水 植物原料を水蒸気蒸留し、精油を抽出する際に一緒に得られる芳香性の水溶液。
【書誌情報】
『二十四節気 暦のレシピ』
猪飼牧子・清水美由紀 著
古くから季節を表す言葉「二十四節気 七十二候」をテーマに、季節の移り変わりを花や植物で感じながら、ものづくりの楽しみを提案。小さな変化を繰り返しながら、季節とともに四季をたどっていく植物。その時季の植物をアレンジメントや料理やおやつに生かしたり、心と体を健やかするハーブやアロマを活用したり、ちょっとしたおもてなしの小物をつくったり。二十四節気を植物とものづくりで体感できるアイデアとレシピ120を紹介します。
関連サイト
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公開日:2024.05.04