「エサ代がかかりすぎる」大手水産会社もマグロの完全養殖から撤退するワケ【眠れなくなるほど面白い 図解 魚の話】

コスパが悪いマグロの養殖

5000年以上前から食べられてきたともいわれるほど、日本人にとってマグロはなくてはならない存在です。スーパーには、マグロを日常の食卓に届けようと、比較的お手頃な「完全養殖マグロ」が並びます。マグロの完全養殖とは、マグロを自然の海に放流することなく、すべての生育過程を人工的に管理する養殖方法のこと。これによって、マグロの生態系への負担を減らし、持続可能な方法で消費者に届けることができるのです。

しかし近年、このマグロの完全養殖が徐々に減っているのです。すでに2025年に入り、大手水産会社がクロマグロの完全養殖から撤退。完全養殖消滅の背景にあるのは、急速な採算悪化といわれています。

卵から孵化させて小さな段階から育てる完全養殖は、出荷するまでに5年は必要です。マグロは1kg太るのに15kgものエサが必要だといわれていて、エサとなる天然のサバやイワシが不漁で高騰している現在、エサ代がかかりすぎてしまうという問題があるのです。

さらには、希少だった天然マグロの資源回復も養殖業には大きな打撃となっています。2025年には日本近海の漁獲枠が5割拡大し、天然マグロの価格が安定、マグロを養殖するメリットが激減してしまったのです。

マグロの完全養殖サイクル

完全養殖とは、人工孵化した稚魚を親になるまで育てて、その親からまた卵をとって、次の世代を生み出す方法。

15kgのエサでやっと1kg増えるマグロ

養殖マグロのエサは、主にアジやサバといった生のエサが基本。加えて栄養バランスを考慮してイカやマイワシなどを組み合わせて与えている。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 魚の話』監修:さかなのおにいさん かわちゃん

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 魚の話』
監修:さかなのおにいさん かわちゃん

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食べること、飼うこと、水族館などでの鑑賞など、日本人にとって身近な生物の“魚類”。

魚類は生き物にしては珍しく、大きさや形、色、生息地域もさまざまなので、個体ごとの身体的特徴も大きく変化します。
また、食用としての魚と観賞用としての魚、漁業などのビジネスとしての魚では注目するポイントが異なるため、色んな角度から見ることができる面白い生物です。

「最古の魚は5億年前! 魚類の誕生と進化」「魚は何を食べる?」
「カニみそは脳みそではなく、肝臓や膵臓にあたる部位」
「シーラカンスが絶滅しなかったのは、味が激マズだったから!?」
「クジラ界にも「ヒット曲」があり、世界中の海で流行る」などなど
そんな魚のあらゆる疑問や意外な生態、誰かに教えたくなる雑学が詰まった子どもから大人まで幅広く楽しめる一冊です。

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