函館で行われた日本初の“非公式選挙”とは!?【眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話】

旧幕府軍が構想した「蝦夷共和国」

一般的に「日本で初めての選挙」という場合、明治23年(1890)に行われた第1回衆議院議員選挙を指します。

しかし、実はその約20年前に、国内で行われた選挙がありました。とはいえ、それは「日本国」の選挙ではなく、明治元年(1868)に箱館(函館)で行われた旧幕府軍によるものでした。

この選挙(入れ札)の結果、旧幕府軍を率いていた榎本武揚が総裁となり、箱館政権(通称・蝦夷共和国)が成立。ただし、この選挙に箱館の住民は参加しておらず、投票したのは旧幕府軍のうち仕官以上の者のみでした。

そもそも榎本武揚率いる旧幕府軍の箱館入りは、倒幕軍からの軍艦引き渡しを拒否したうえでのクーデターでした。榎本は幕府の全艦隊を率いて品川沖から脱走。仙台で土方歳三らと合流したのち北海道に上陸し、箱館の五稜郭に立て籠もって新政府軍に抗戦しました(箱館戦争)。

旧幕府軍はおよそ7カ月にわたって戦うも、明治2年5月から始まった新政府軍による総攻撃により土方は戦死。旧幕府軍はほどなく降伏し、榎本は入獄しました。

榎本が「蝦夷共和国」の総裁であった期間はわずか5カ月ほどでしたが、蝦夷地の開拓という構想は新政府軍にも引き継がれ、屯田兵制度へとつながっていきました。

箱館戦争と「蝦夷共和国」

旧幕府軍と箱館戦争

箱館戦争は、旧幕府軍と新政府軍が戦った戊辰戦争の最後の戦いで、「五稜郭の戦い」とも呼ばれます。榎本が率いた旧幕府軍は箱館を占拠し、さらに松前城を陥落させ、江差を制圧して蝦夷地を占領。榎本らは新政府に、蝦夷地を旧徳川家臣団に与えることを要望する嘆願書を送ったが拒否され、新政府軍の総攻撃を受けて降伏しました。

箱館戦争の展開

▲五稜郭の空撮。箱館の防衛のため幕府によって建設された洋式城郭。5つの稜堡を持つ星形をしており、その外周は約1.8km ある。

箱館戦争と土方・榎本

下の土方の写真は箱館で撮ったもの。鳥羽・伏見の戦いで敗れてのちの土方は、自分の装いや新選組の装備を洋式に切り替えていた。しかし、箱館戦争終結の7日前、馬上で銃弾を受け生涯を終えた。一方、箱館戦争後に入獄した榎本は、特赦されて北海道開拓に従事。ロシアとの間で樺太・千島交換条約を締結し、文部・外務などの各大臣を歴任するなど軍人・政治家として活躍した。

榎本武揚(写真左)と土方歳三(国立国会図書館蔵)。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話』監修:和田 哲

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監修:和田 哲


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