日本初の鉄道は新橋じゃなかった!? 北海道・茅沼に眠る“幻の鉄路”とは【眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話】


日本で最初の鉄道が敷設されたのは北海道だった?
幕府が建設を計画した炭坑軌道
日本の鉄道の始まりは、明治5年(1872)9月12日、新橋 – 横浜 間とされています。しかし、北海道ではこの「日本初」の開通以前に、鉄道が敷設されていました。
きっかけは、安政3年(1856)に茅沼(現在の泊村)で石炭が発見されたことでした。当時、江戸幕府は西洋式海軍整備の一環として蒸気船を購入しており、蒸気船用の石炭の確保は急務でした。すぐさま箱館奉行所は石炭の調査を開始し、元治元年(1864)には米国人技師を招いて茅沼炭鉱の採掘を開始しました。
そうした中、人力による採掘運搬を見た英国人技師エラスムス・ガウワーは、効率化のために鉄道(トロッコ)の建設を提案。慶応2年(1866)には測量が開始され、建設が始まりましたが、戊辰戦争の影響で建設は中止されました。
その後、鉄道の建設は明治政府に受け継がれ、明治2年(1869)に 茅沼炭鉱口 – 茅沼港 間の2.8kmが開通。ただし、鉄道といっても木のレールを鉄板で補強したもので、走るのは運搬用のトロッコでした。また、動力は蒸気機関車ではなく、牛や馬、人力でした。
この茅沼炭鉱軌道を「日本初の鉄道」とする説もありますが、人を乗せる旅客鉄道ではなかったため、一般的には 新橋 – 横浜 間の開通が日本最初の鉄道とされています。
北海道で最初の鉄道は?
昭和初期に役目を終えた茅沼炭鉱軌道
明治17年(1884)、茅沼炭鉱は民間に払い下げられ、昭和2年(1927)、茅沼炭鉱軌道は沢口汽船鉱業株式会社によって蒸気化されました。しかし、昭和6年(1931)、事業を引き継いだ茅沼炭礦株式会社が選炭場と岩内港をつなぐ索道(ロープウェー)を設置し、茅沼炭鉱軌道は廃止に。茅沼炭鉱も昭和39年(1964)に閉山され、108年の歴史を閉じました。

明治時代初期に開通した北海道で最初の蒸気鉄道
北海道で初めて蒸気機関車が走ったのは、明治13年(1880)11月、官営幌内鉄道が敷設した手宮(小樽市)-札幌間の35.9km で、2年後の明治15年(1882)11月には、札幌-幌内(三笠市)間が完成。幌内鉄道が開業しました。幌内鉄道は、幌内の炭山から港のある小樽へ石炭を運ぶために敷かれた鉄道でした。しかし、石炭産業の衰退にともない起点であった手宮駅は昭和60年(1985)に廃駅となり、現在は跡地が小樽市総合博物館になっています。


【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話』監修:和田 哲
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