検査では“異常なし”でもつらい不調…東洋医学が見抜く「季節ブルー」の正体とは【その、しんどさは「季節ブルー」】


季節ブルーの人が病院を訪れてみたら……
書籍冒頭に登場したA子さんとB子さんは先に、西洋医学の診療を行う病院を訪れたときのことを話してくれました。A子さんは春先に胸の息苦しさやイライラ、不眠を感じています。そして、B子さんは季節の変わり目にのぼせや動悸 、足元の冷え、天候に左右される頭痛やめまいに悩んでいます。
お2人は診察を受けた結果、医師から、ストレスや自律神経の乱れ、あるいは更年期障害の可能性などを指摘されたと語ります。
西洋医学では、心の不調は脳の機能的な障害や神経伝達物質の不具合と考えます。A子さんのような場合は、抗不安薬や睡眠導入剤、B子さんのような場合は気分安定薬やホルモン補充療法などが提案されることがあります。また、心理的な要因が大きいと判断されれば、カウンセリングをすすめられることもあるでしょう。
しかし、A子さんもB子さんも、処方された薬を服用したり、カウンセリングを受けたりしても、症状がスッキリと改善するとは限りませんでした。検査をしても「特に異常なし」と言われ、B子さんのように「病気じゃないなら仕方ない」となかばあきらめてしまうケースも少なくありません。
西洋医学は、体を臓器や組織ごとに細分化し、客観的な検査データに基づいて診断・治療を行うのが特徴です。感染症やがん、怪我など、原因が特定できる病気に対しては、科学的根拠に基づいた治療法が確立されており、特に、救急医療や外科手術などでは大きな力を発揮します。
しかし、A子さんやB子さんが経験するような、検査では異常が見つかりにくい「何となくの不調」や、気候の変化、精神的なストレスなどが複雑に絡み合った病態に対しては、対症療法にとどまり、根本的な解決に至らないことが多々あります。
症状を緩和する対症療法が中心となり、薬を手放せなくなったり、副作用に悩まされたりすることもあるのが現状です。心と体のつながりや、生来の気質や個々の体質といった側面には目を向けられない傾向があります。
東洋医学の観点も盛り込んで季節ブルーの人を診察
西洋医学の治療ではなかなか改善しなかったA子さんとB子さん。もし、東洋医学の専門家を訪ねたらどうだったでしょう?
A子さんの春先の胸の息苦しさ、イライラ、不眠、お腹の張りといった症状は、東洋医学では、「肝」の機能の乱れ、生命エネルギーである「気」の流れの滞り「気滞」が原因と考えられます。春は肝の季節であり、ストレスや環境の変化によって肝の気がスムーズに流れなくなると、A子さんのような症状が現れます。
そこで、治療としては、気のめぐりを良くする漢方薬の処方や整体治療、鍼灸治療、リラックスできる生活習慣のアドバイスなどが検討され、治療を続けることでA子さんはやがて心と体の緊張が和らぎ、症状は次第に改善していくでしょう。
一方、B子さん。のぼせと足元の冷え、動悸 、天候による頭痛やめまいは、気と全身に栄養を運ぶ「血」のめぐりの悪さ、体の冷え、そして体の水分を表す「水」の滞りなどが複雑に関係していると考えられます。特に気圧の変化への弱さは、気圧を感知する内耳の前庭神経や体内の水分バランスの乱れが影響している可能性があります。
治療としては、体を温め、「気血」のめぐりを整え、余分な水分を排出するような漢方薬の処方や、体を冷やさない食事指導、「血」や「水」のめぐりを良くするための適度な運動などがすすめられます。これらにより、B子さんのつらい症状も和らいでいくと期待できます。
このように東洋医学では、不調の原因をひとつの臓器や物質に限定せず、体全体をひとつの生命エネルギーシステムとして捉え、心と体のバランスの乱れを整えることを重視します。
患者さんひとりひとりの体質や症状の現れ方を詳しく診察し、根本的な原因に働きかけるオーダーメイドの治療が基本です。副作用が比較的少なく、体質改善を目指せるのが大きなメリットと言えます。ただし、効果を実感するまでに多少時間がかかったり、西洋医学的な検査に基づかない診断が曖昧に感じられたりするかもしれません。
また、東洋医学には「未病先防」という重要な考え方があります。これは前述したように、本格的な病気になる前の、ちょっとした不調の段階で対処し、病気を予防するというものです。四季の変化に合わせた養生法を実践することも、この未病先防の考えに基づいています。
A 子さんを東洋医学の観点から見ると
春の季節は「肝」の機能が乱れやすいからその影響を受けて全身の不調が出ると考えられる

【出典】『その、しんどさは「季節ブルー」』著:長沼睦雄
【書誌情報】
『その、しんどさは「季節ブルー」』
著:長沼睦雄
「春先はいつもイライラして、眠れない」
「雨が降る前は、決まって頭が痛い」
「秋になると、理由もなく気分が落ち込む」
「寒い冬はずっと気分が鬱々としてしまう…」
毎年やってくる季節の変わり目の不調。
それは、あなたの「気のせい」でも「怠け」でもありません。
実は近年、こうした「季節ブルー」を感じる方がとても多くみられます。
西洋医学では「自律神経の乱れ」や「ホルモンバランスの変化」と説明されるそれらの不調は、二千年以上前の東洋医学の聖典『黄帝内経』によれば、自然界のエネルギー(気)と私たちの体が共鳴し合うことで生じる、ごく自然な反応です。
だから、心と体がしんどくなっても、決して自分を責めないでください。
本書は、過敏性研究の第一人者である著者が、西洋医学の豊富な知識で不調の「正体」を解き明かしながら、東洋医学の知恵を用いて、あなたに寄り添う1冊です。
最新の医学的知見と、古代からの壮大な知恵を組み合わせ、「なぜ季節の変わり目に、あなたの心と体はゆらぐのか?」その根本原因を解き明かし、気圧、気温、湿度、日照時間といった自然のリズムと上手に付き合い、自分自身を優しくいたわるための具体的な「養生法」を提案します。
私たちが本来持っている自然治癒力を引き出し、根本からゆらぎにくい心と体質へと整えていきましょう。
ページをめくるごとに、自分の不調の正体がわかり、心がふっと軽くなるはずです。
もう、季節の変化に振り回されない。
これは、変化の多い時代を生きるあなたのための、一生もののお守りとなる一冊です。