神に仕える「神官」はどんなことをしていた?【眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話】

神に仕える「神官」はどんなことをしていた?
神々の世話をし儀式を行う神官
古代エジプトでは神々の力を維持し続けるため、日々の奉仕と儀式がきわめて重要とされました。その役目を果たすのが「神官」と呼ばれる人々で、神殿で神に仕える専門的な職業でした。
神官は毎朝、日の出とともに儀式を開始します。まず身を清め、神殿内で神像に対して目覚めの儀式「開眼の儀」を執り行いました。その後、香を焚き、衣を着せ、食事を供え、聖なる言葉を唱えながら奉仕しました。神を「生かし続ける」これらの儀式は、国家と宇宙の秩序を守るために不可欠で、儀式は厳密に定められた手順に基づき、誤りなく継続されることが求められました。
神官には高い教養が求められ、天文学や暦法、医学、文学、呪術などにも精通していました。また彼らは儀式前に断食や禁欲生活を守るなど、常に清浄さを保つことも必要でした。神官職は代々受け継がれ、大司祭のなかには政治や王権に深く関与し、国政に影響を与える者もいました。
儀式は日常的に行われるだけでなく、年中行事や特別な祭礼の形式ももちました。重要な神の祝祭では、神像が神輿に乗せられ町を巡行することもあり、このとき庶民は神に願いや悩みを告げることができました。こうして儀式は民衆とのつながりを強め、神の恵みを社会に行き渡らせる役割も果たしました。神官の儀式は、国家・社会・宇宙の安定と継続を支える基盤だったのです。
神官の日々の儀式

酩酊の祭り
【ハトホルのための酩酊祭り】
女神ハトホルは、美や愛、音楽をつかさどる一方、ライオンのような激しい性格ももち、人間を滅ぼす力があるとされました。あるとき人間が太陽神ラーに背いたため、ハトホルは人間を滅ぼそうとします。しかし神々は人類を救うため、血のように赤く染めた大量のビールを用意しました。ハトホルはそれを血と思って飲み干し、酔いで怒りを忘れてしまいます。
この神話に由来して、人々はビールやワインを楽しみながらハトホルを讃える「酩酊の祭り」を行うようになりました。

【ハトホルの多様な役割】
・天の牝牛
・鉱山の守護神
・ファラオに乳を与える牝牛
・妊婦の守護神
・死者の守護神
・運命を告げる神
・神々の母

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話』著:河合 望(エジプト学者・考古学者/筑波大学人文社会系教授)
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話』
著:河合 望(エジプト学者・考古学者/筑波大学人文社会系教授)
ピラミッドはなぜ造られたのか?
ミイラにはどんな技術が使われていたのか?
そして、古代エジプト人は何を考え、どんな毎日を送っていたのか――?
いまだ多くの謎に包まれ、世界中の人々を惹きつけてやまない古代エジプト文明。
本書では、最新の考古学研究に基づき、ピラミッド建築の真実、ミイラ作りの驚くべき技術、今なお世界中の研究者が追っている次なる謎など、古代エジプト文明にまつわるトピックをわかりやすく図解で解説します。
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