“赤鬼”ホーナー。嵐と共に去りぬ【二宮清純 スポーツの嵐】

93試合で31本塁打・73打点・打率.327

 MLBにおける昨季の最高の“ショータイム”は、ドジャースが3戦全勝と王手をかけて迎えたブルワーズとのナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦だった。

「1番投手兼DH」で先発出場したドジャースの大谷翔平は、投げては6回0/3を無失点、10奪三振。打っては3本塁打。特に2本目は文字通りの“驚弾”で、ドジャースタジアムのライトスタンドの屋根を直撃した。

 距離にすると約143メートル。チームメイトのフレディ・フリーマンが、見てはいけないものでも見たような表情を浮かべ、手で顔を覆ったシーンが印象的だった。

 かくして10月17日(現地時間)は“伝説の一日”としてMLB史に刻まれた。

 今から39年前の1987年5月6日、神宮球場にモンスターが出現した。来日したばかりの新外国人は、阪神の池田親興から、3本の本塁打を叩き込んだ。レフト方向に1本、左中間方向に1本、そしてセンター方向に1本。翌日のスポーツ紙の見出しが振るっていた。

<ア然ボー然3発 ホーナー改めホーマーだ!!> 

 この試合は私も取材したが、快音を発した瞬間に、打球はスタンドに消えていた。「これぞ音速の打球!」と度肝を抜かれたものだ。

 モンスターの名はボブ・ホーナー。前年にMLBのブレーブスで27本塁打、87打点をマークし、FA権を取得したが、年俸交渉がまとまらず、ホーナーによれば「オーナー間の締め出し作戦」にも遭い、87年の春は、“浪人生活”を余儀なくされていた。

 そのホーナーに目を付けたのがヤクルト。4月中旬に契約をかわし、5月5日に日本デビューを果たした。

 この試合で、いきなり本塁打を放ったホーナーは、先述したように翌日の試合で3本もスタンドに叩き込み、バリバリのメジャーリーガーの実力を満天下に知らしめた。

 ホーナーが日本球界に与えたショックがいかに大きかったかについては、阪神のランディ・バースが「300本打てる」と語ったことでも明らかだろう。

 一躍人気者になったホーナーは、缶ビールのCMにも出演するなど、日本中に“赤鬼フィーバー”を巻き起こした。

 1年目、ホーナーは93試合ながら31本塁打、73打点、打率3割2分7厘という好成績を残した。

 わずか200日足らずの滞在ながら、これほどインパクトを残した外国人は後にも先にもいない。風ならぬ「嵐と共に去りぬ」である。

初出=週刊漫画ゴラク2月14日発売号

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