筋肉を圧倒的に肥大させる「エキセントリックトレーニング」の効果を最大限にさせるためのポイント【鍛え方の最適解がわかる 10万論文筋トレ】

エキセントリックトレーニングは「ゆっくり下ろす」だけでは意味がない

筋肉を圧倒的に肥大させるトレーニング法

 筋肉の収縮には、求心性収縮(コンセントリック)、等尺性収縮(アイソメトリック)、遠心性収縮(エキセントリック)の3種類がありますが、エキセントリックトレーニングは、筋肉が伸びながら収縮する遠心性収縮に重点を置いたトレーニング方法です。

 もともと1989年に発表された研究から、遠心性収縮は求心性収縮や等尺性収縮に比べて20%から最大40%ほども大きな力が発揮でき、筋力増強や筋肥大効果が高いといわれていました。つまり、ダンベルでひじを曲げる求心性収縮や、曲げたまま耐える等尺性収縮よりも、ひじを下ろす遠心性収縮のほうがより大きい負荷に耐えることができ、速筋線維と呼ばれるタイプⅡ線維の大きな筋肉も動員されやすいということです。

 2018年には、カナダのカルガリー大学で、遠心性収縮のほうが強い負荷に耐えられる理由について、検証が行われました。筋肉が収縮するときは、ミオシンという太い線維がアクチンという細い線維を引き寄せ、ふたつのフィラメント(線維)が重なり合って全体が短くなります。これが遠心性収縮の場合、筋肉が伸ばされるときにタイチンという第3のフィラメントがミオシンとアクチンを橋渡しするようにつなぎ、バネのような役割をして、強い負荷に耐えられるようになるのではないかといわれています。つまり、遠心性収縮では筋肉の構造的にも強い負荷に耐えやすくなっているので、エキセントリックトレーニングを行うのであれば、求心性収縮で使っている重さよりも、より大きな重量を使う必要があるのです。例えば、レッグプレスをやるときに求心性収縮では100㎏くらいで行った場合、遠心性収縮では重量を140㎏に変えてトレーニングを行います。「ゆっくり下ろす」などという意識ではなく実際の負荷量を変える。これが解剖学的な構造を利用したエキセントリックトレーニングになります。

エキセントリックトレーニングの効果

 エキセントリックトレーニングの筋力増強効果について、2018年に早稲田大学が、片足に「ひざ関節伸展筋のエキセントリックトレーニング」を行い、もう片方はコントロール群として「求心性収縮のコンセントリックトレーニング」を行って、どちらがより筋力増強が起こるのかという調査を実施しました。ひざ関節伸展筋力では、4週め時点でどちらにも筋力増強が見られましたが、その差が衝撃的で、コンセントリックトレーニング群では20%の向上が見られたのに対し、エキセントリックトレーニング群では73%の向上と、筋力が3.5倍以上強くなっていたのです。

 また、筋肥大については、2017年に筋トレ研究の第一人者であるブラッド・シェーンフィールド博士が、エキセントリックトレーニングVSコンセントリックトレーニングの筋肥大に関するメタ分析を行った結果、エキセントリックトレーニングを行うことによって、より筋肥大が起こりやすいという結論が導き出されています。つまり、コンセントリックトレーニングとの比較では、筋力増強、筋肥大、どちらもエキセントリックトレーニングの勝利ということです。

 さらに、エキセントリックトレーニングを継続することで、タイプⅠ線維よりも大きなタイプⅡ線維に働きかけ、普通のレジスタンストレーニングでは筋肥大が止まってしまった中級・上級トレーニーの筋肉も大きくしてくれる可能性があります。つまり、ボディメイクで全身の筋肉をバランスよく大きくするためには、エキセントリックトレーニングを行う必要があるということです。

 ただし、筋肥大に関しては、総負荷量を統一することでエキセントリックトレーニングとコンセントリックトレーニングの効果はほぼ同じになります。また、筋力増強に関しても12週後には神経活動の増強によるエキセントリックトレーニングの効果はなくなってしまいます。12週め以降は神経系の活性化ではなく、筋肉の肥大によって筋力増強が起こっていくので、やはり長期的に見ればエキセントリックトレーニングで筋肥大をどのように起こしていくのかが重要になります。

エキセントリックトレーニングの実践方法

 エキセントリックトレーニングの方法は、簡単です。まず求心性収縮で身体の両側で運動を行い、次に遠心性収縮で身体の片側での運動に切り替えることで、簡単にエキセントリックトレーニングをさまざまなトレーニングに応用することができます。例えば、レッグカールを行うときには、求心性収縮である上げる運動のときには両足で上げ、遠心性収縮である下げるときは片足で行うという方法です。通常、遠心性収縮では求心性収縮の120〜140%の力を発揮することができるので、両足で1RM60〜70%の負荷量に設定して、遠心性収縮では片足に変える負荷量の設定がおすすめです。ただし、すべてのトレーニングをエキセントリックトレーニングで行おうとすると、求心性収縮での負荷量が落ちてしまう可能性があるため、あくまで従来の筋力トレーニングに追加するような意識で行います。

 2021年の最新の研究では、エキセントリックトレーニングの効果を最大限にさせるためのポイントとして、動作を2秒間かけて行うことが重要とされています。トレーニングでは、求心性収縮や等尺性収縮の動作は集中してゆっくり行っても、筋肉を伸張させる遠心性収縮はおざなりになりがちですが、伸長動作こそ集中して行います。最初は2秒から始めて、慣れてきたら徐々に5秒くらいまで延ばしていきましょう。

 ただし、筋トレ初心者においては、エキセントリックトレーニングを行っても筋力増強や筋肥大が起こりません。かなりの数の研究で、初心者ではエキセントリックトレーニング後に筋力増強、筋肥大が起こらないばかりか、筋損傷を引き起こしてしまうことが明らかになっています。特に筋トレ歴が3ヶ月に満たない初心者や、2週間に1回くらいの頻度でしかトレーニングをしていない人は、関節や関節周囲の組織を痛める原因となってしまうため、絶対に行わないでください。週に3回以上のトレーニングを3ヶ月以上続けていて、筋肉痛はほぼ起こらなくなったという人は、エキセントリックトレーニングによる筋肥大・筋力増強の効果をぜひ一度試してみてください。

【出典】『鍛え方の最適解がわかる 10万論文筋トレ』著:理学療法士・パーソナルトレーナー 論文男

【書誌情報】
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