1カ月かけて心身ともに「シーズンモード」へ!プロ野球選手としての4月の過ごし方!巨人、高梨雄平投手の連載日記【ナシさんのアリな話 鉄腕奪取】第17回!


調子の上下動は「上」よりも
「下」の部分にフォーカスすることが大切

『ラブすぽ』読者のみなさん、読売ジャイアンツの高梨雄平です。今シーズンも熱い応援、ありがとうございます!このコラムを書いているのは4月の終わり、開幕から約1カ月が経ったタイミングなんですけど、僕自身は4月時点で12試合に登板しています。このくらい投げれば、残っている数字から今季の状態や調子も少し見えてくるのか……というと、実はまだそんなことはないんです。
というのも僕の場合、チーム内の役割上どうしても試合数のわりに投球イニングが多くない。これは毎年そうなんですけど、たとえば僕と同じようにリリーフで12試合に投げて、回またぎも含めて15イニングくらい投げているのであれば、残った数字をある程度“サンプル”として活用できるかもしれません。
今の時期はまだ1点取られた、取られないだけで数字が大きく変動するので、ほとんど参考にはならないんです。5月が終わって2カ月くらい経てば、もう少し見えてくるのかなという気はしています。
……ということを書きながら、実はここ数年、特にこの時期は自分の成績はほとんど見ていません。4月の時点で12試合登板というのも、このコラムを書くために初めて知りました(笑)。登板数だけで言うと、12試合というのは多くも少なくもない「通常運転」というイメージです。僕はだいたい1カ月で8~12試合くらい投げることを想定していて、これが「15試合」くらいになると「ちょっと今月は投げたな」と感じる程度。その意味では順当に来ているのかなと思っています。

僕自身の肉体のコンディションも、1カ月が経ってようやく「シーズンモード」に入ってきたな、という感覚でいます。変な身体の張りもなくなってきましたし、自分自身の体調、コンディションも掴めてくる。毎年それを掴むまで1カ月くらいかかるんです。あくまで「僕自身」の場合ですけど。
こういうことを書くと、たとえば「じゃあ調整ペースを1カ月早めれば、開幕をもっとコンディションの高い状態で迎えられるのでは?」と思う方もいるかもしれません。ただ、実はそんな単純な話ではないんです。
プロ野球選手は基本的にオフの期間から自主トレ、2月のキャンプ、オープン戦を経て開幕を迎えます。じゃあ自主トレの段階からもう少し強度を高めたり、キャンプでの調整スピードを上げたら、開幕時点でのコンディションが上がるのかと言われたら一概にそうとも言い切れない。
「一軍の公式戦」のマウンドでなければ感じられない体への負荷もあるし、僕のようなリリーフは、公式戦では「いつ投げるか分からない」という事情もあります。オープン戦までは基本的に「この試合の何回から投げるよ」というのが分かっているので、それに向けて調整を進めるんですけど、シーズンに入れば急に肩を作らなければいけないことも、肩を作ったのに結局投げないことも、登板が続くことも、逆に間隔が空くこともある。だからキャンプでいくら調整ペースを上げても、本当の意味で開幕までには「完全には仕上がらない」んです。

開幕からの1カ月間は、ある意味で「プロ野球選手としての生活リズム」に順応するための期間。ここからシーズン中盤~終盤にかけては状態が上がってくるに越したことはないし、できれば上がってほしいなとも思っています。ただ、ここで大事なのは「万が一、上がらなくてもしっかり仕事をできるレベルを保つ」ことです。
僕のようにシーズン数十試合を投げることを計算されている立場の投手にとって、これはすごく大切なことです。143試合+ポストシーズンという長丁場を考えると、どんな選手でも調子の上下はあります。そんなとき、僕自身は「上の数値」よりも「下の数値」のほうが大切だなと思っていて、「どんな場面、どんな状態でも最低限このくらいはやってくれる」ということが信頼であったり、最終的に残せる結果にもつながる。
これはプロ野球選手に限らずどんな仕事でもそうですよね。やるときはやるけど、「今日は気分が乗らないし体調もすぐれないから良い仕事できません」みたいな人と一緒に仕事をするのって大変じゃないですか(笑)。そういう人にはなかなか大事な仕事を任せられないと思うし、プロ野球選手も同じです。調子の上下動はなるべく狭く保ちつつ、なおかつ「下」の部分を底上げする。これはプロ野球選手として常に意識している部分です。
今回のコラムではプロ野球選手として、「開幕1カ月」をどう捉え、どう過ごしたのかをお伝えしましたが、次回は今回のコラムでもちょっとだけ触れた「数字を見ない」理由と、今季のジャイアンツについてもお話しようと思います。ぜひ、お楽しみに!
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