【疲労の正体】「疲れが吹き飛んだ」は脳の錯覚?知らないうちに蓄積する“本当の疲労”とは【脱・疲労回復 「疲れないしくみ」をつくる脳の習慣】

「疲労感」はすぐに抜けても「疲労」はとれていない

疲労感と疲労は、似て非なるもの

 疲れについて必ず押さえておきたい、とても重要なことがあります。それは「脳で実際に起こっている疲労」と「自分が自覚する疲労感」は、まったくの別物だということです。

 簡単にいえば、脳内で実際に生じている”生理的な疲れ”が「疲労」であり、脳が「疲れている」と知覚する現象が「疲労感」です。つまり、疲労は客観的な現象で、疲労感は主観的な感覚。この両者は、必ずしも一致するときばかりではありません。

 たとえば、長時間の仕事でクタクタに疲れていたはずなのに、嬉しい知らせを聞いた瞬間に気分が高まり、さっきまで重かった体が急に軽くなった――そんな経験はないでしょうか。また、眠っている最中に急に起こされても、通常なら眠気が強いはずなのに、時計を見て寝坊に気づいた瞬間、一気に目が覚めて慌てて起き上がる朝もあるでしょう。

 どの例にしても、脳そのものには確かに疲労がたまっています。それでも「疲れが吹き飛んだ」「元気になった」と感じるのは、実際の脳疲労の有無とは別に、脳には〝疲労を感じているかどうか〟をコントロールするしくみが備わっているからです。

ズレが起こる理由と問題点

 なぜ、このように「疲労感」と「疲労」にズレが生じるのでしょうか。ポイントとなるのが、自律神経の中枢と前頭葉です。自律神経の中枢は、視床下部と呼ばれる脳の真ん中あたりにあり、その名の通り、自律神経を統括し、脳を守るため体温や呼吸、心拍、発汗、内臓を自動で調整しています。意識せずとも呼吸や汗の量、体温などが一定に保たれているのは、この自律神経の中枢が24時間休むことなく働いているからです。

 しかし、運動や仕事、家事など負荷が強ければ強いほど、自律神経は脳に対して酸素と栄養を供給し、脳温度を安定させるため頻繁かつ精密に各器官に指示を送らなければなりません。その結果、自律神経の中枢が疲弊していきます。これが、いわゆる「脳疲労」です。

 一方、前頭葉は、意欲や判断力、達成感をつかさどる、人間特有の高度に発達した領域です。人間が他の動物と異なるのは、この前頭葉が極めて発達していること。脳の奥では疲労が蓄積していても、前頭葉が強く働いている間は「まだ頑張れる」「やりたい」「楽しい」と錯覚してしまうのです。疲れきっているはずのランナーが、一気にスピードを上げて走る「ランナーズ・ハイ」と同じです。脳が疲れているのに、脳自身が「疲れていない」という信号を送ってしまう。人間の脳に備わった、この高度なシステムが、疲労を「見えない化」する大きなリスク要因になるわけです。

 では、仕事や趣味が充実していて、疲れを忘れて打ち込んでしまう人は、どうやってこの「見えない疲労」に対処すればよいのでしょうか。ここでも大切なのは「小さなサイン」を見逃さないことです。

 今日はささいなことにイライラしてしまう、無性に甘いものが食べたくなる、いつもは階段を使っているけれど今日はエスカレーターにしよう――。このような”いつもとちょっと違う”自分の言動を繊細にキャッチするようにしてください。達成感ややる気で脳疲労を感じにくくなっていたとしても、何らかの形で疲労のサインが現れるものです。

 このようなサインを感じ取ったら、その段階で休憩を入れる、遠くを見る、深呼吸をする、軽く体を動かすなどして、脳を疲労から守るようにしましょう。

前頭葉が疲労を隠す

人間特有の高度に発達した前頭葉が、「意欲」や「達成感」を生み出して疲労のサインを覆い隠してしまうことがあります。

【出典】『脱・疲労回復 「疲れないしくみ」をつくる脳の習慣』著:梶本修身

【書誌情報】
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