花粉症・五月病・不眠…春に不調が増える理由とは【その、しんどさは「季節ブルー」】

新たなサイクルの始まる「春」その急激な変化にゆさぶられる

立春は毎年2月4日頃。自然界全体が冬の眠りから覚め、活動を活発化させる季節が始まる。

東洋医学の根幹をなす陰陽思想では、宇宙のあらゆるものが「陽」(活動、上昇、熱)と「陰」(休息、下降、冷)の二元性によって成り立ち、そのバランスが循環によって保たれている状態が健康と考えます。

春は、冬の陰の極みから陽が回復し始める「一陽来復」の季節で、陰から陽へのエネルギーの移行期。冬の間に蓄えられ、内にこもっていた陰のエネルギーが減少し、陽のエネルギーが力強く上昇し、万物が伸びやかに成長する勢いに満ちています。

この時期は、生命の誕生と再生の象徴であり、天地の「気」が交わり、新たなサイクルが始まる重要な転換点とされます。特に春分の日(3月20日頃)は、昼と夜の長さがほぼ等しくなり、このエネルギーの均衡と転換が最も顕著に現れ、私たちの心と体もこの自然のリズムに深く影響を受けます。

春の陽気は、私たちの気のめぐりを活発にし、前向きな気持ちをもたらしますが、急激な変化に適応できない場合は、心と体のバランスを崩しやすくなります。

また、風が強く吹く日が多くなるのも春の特徴です。東洋医学ではこの風を「風邪」と呼びます。『黄帝内経』では、この「風邪」が皮膚や毛穴を攻撃し、鳥肌が立ったり毛穴が閉じたりする症状を起こすと説明しています。

また「風邪」は、体の表面にある毛穴を開かせ、ほかの邪気(寒邪、湿邪、暑邪など)を体内に招き入れ、さまざまな病気の原因となる「万病の元」であると捉えられるため、別名「百病の長」とも呼ばれています。春は特に体調を崩しやすいのです。

このように、春は生命の活力を促す一方で、私たちの体に新たな適応を求める、ダイナミックな季節と言えるでしょう。

春に起きやすい心と体の不調

春の大きなエネルギーシフトに体が適応しきれないと、自律神経やホルモンバランスが乱れやすくなります。体が無意識に「陰陽」のバランスをとろうとするホメオスタシスという生理的機能の調整にも影響を与え、自律神経やホルモン、免疫の働きを活発にさせます。これら3つは三位一体で機能しており、どれか1つが変動すれば、ほかの2つが必ず影響を受けます。

たとえば、春になると、新学期や新年度の始まりに伴う入学、入社、人事異動、引っ越しなど、生活環境の変化が著しく、精神的なストレスが増大します。活動時に優位になる交感神経が過剰に働き、血管の収縮、動悸、イライラ、集中力の低下、不眠といった多様な身体的・精神的症状が現れます

また、春先に見られる「三寒四温」と呼ばれる気温の急激な変化は、ホメオスタシスの頻繁なオン・オフの切り替えを要求し、体力を著しく消耗させます

耳の奥にある内耳は気圧の変化を感知するセンサーとして機能しますが、低気圧時には副交感神経が活性化され、頭痛、だるさ、眠気、古傷の痛みなどを感じやすくさせるのです。

● 春の代表的な不調・花粉症

花粉症は免疫系の過剰反応によるもので、東洋医学では、春に影響を受けやすい「肝」(自律神経や感情を司る)の「気」の滞り、「肺」の機能低下(肺は肌や皮膚のバリア、呼吸を司る)、「脾」の機能低下水分代謝を司る)が体全体のバランスを乱し、花粉症の症状を悪化させると考えられます。

● 五月病など精神面の不調

この時期は、気分の落ち込み、憂うつ感、意欲低下、続いてイライラ、不眠、頭痛といった精神的な不調を訴える人が増えます。これは、気のめぐりが滞り、感情が停滞すると、最初は抑うつ症状が見られますが、それが続くと、気が高ぶって興奮状態につながるためです。

【出典】『その、しんどさは「季節ブルー」』著:長沼睦雄

【書誌情報】
『その、しんどさは「季節ブルー」』
著:長沼睦雄


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「春先はいつもイライラして、眠れない」
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毎年やってくる季節の変わり目の不調。
それは、あなたの「気のせい」でも「怠け」でもありません。
実は近年、こうした「季節ブルー」を感じる方がとても多くみられます。

西洋医学では「自律神経の乱れ」や「ホルモンバランスの変化」と説明されるそれらの不調は、二千年以上前の東洋医学の聖典『黄帝内経』によれば、自然界のエネルギー(気)と私たちの体が共鳴し合うことで生じる、ごく自然な反応です。

だから、心と体がしんどくなっても、決して自分を責めないでください。

本書は、過敏性研究の第一人者である著者が、西洋医学の豊富な知識で不調の「正体」を解き明かしながら、東洋医学の知恵を用いて、あなたに寄り添う1冊です。

最新の医学的知見と、古代からの壮大な知恵を組み合わせ、「なぜ季節の変わり目に、あなたの心と体はゆらぐのか?」その根本原因を解き明かし、気圧、気温、湿度、日照時間といった自然のリズムと上手に付き合い、自分自身を優しくいたわるための具体的な「養生法」を提案します。

私たちが本来持っている自然治癒力を引き出し、根本からゆらぎにくい心と体質へと整えていきましょう。
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