巣立っても飛べない? カラスのヒナの危なっかしい成長過程【眠れなくなるほど面白い 図解 カラスの話】


小鳥より育つまで時間がかかります

巣立ちといっても、いきなり飛べるわけではありません。カラスのヒナはとりあえず巣から出ては戻るのを繰り返しながら、次第に巣立ちます。最初のうちは枝に止まって寝ているか、口を開けてエサをねだっているかで、飛ぶこともほぼできません(羽ばたくことはできます)。数日すると「それちょうだい」と親を追いかけながら飛ぶ練習をしますが、1週間くらいはかなり危なっかしい飛び方です。そういうわけで、親鳥はヒナにエサを運ぶのと、ヒナを危険から守るのに必死です。
小鳥の場合、巣立ちヒナは数週間もすると親元を離れ、独立します。ですが、カラスが独立するには数ヶ月を要します。最初のうちはすぐエサをくれる親ですが、次第にエサをねだってもプイと横を向くようになります。そうやってエサの取り方や外敵を覚えて、独立する準備をします。
独立は夏の終わりから秋にかけてですが、なかなか出て行かないヒナを親鳥が追い回して叩き出すこともあります。このとき、オスのほうが激しく怒ることも知られています。
ときには翌年になっても親の縄張りに残っていることも。この辺は周囲の環境の厳しさ(鳥類ではエサが得にくいと独立が遅れる例が知られています)、縄張りの防衛の必要性などによって違います。スペインのハシボソガラスではヒナをそのままヘルパーとして縄張り置いておき、縄張り防衛を手伝わせる例が知られています。
ヒナが食べるエサの種類と頻度
主なヒナのエサ
・ミミズや昆虫など
・動物の死骸
・人間の食べ残し
基本、親と同じものですが、高タンパク高カロリーです。
エサを食べる頻度
【1日に24~48回】
最初は1時間に1回くらいですが、巣立ち直前だと15分から30分に1回くらいエサをもらっています。1日に12時間活動したとして24回から48回!
カラスQ&A
なぜ鳥類のオスの多くは子育てに協力的なの?
大量のエサやりが一羽では追いつかないから
鳥のヒナは母乳ではなく、最初からエサを食べるのでオスもエサ運びができます。また、鳥の成長速度はとても速く、巣立ちのときは親と大差ない大きさになるので、大量のエサが必要になります。これをメス1羽で運ぶのは大変なので、オスも協力する種が多いのでしょう。
独立せず、親の繁殖を手伝う「ヘルパー」も
独立して親元を去らず、居残って親の繁殖を手伝う個体をヘルパーと言います。スペインのハシボソガラスでもヘルパーが見つかっています。独立して遠くへ行くのを分散と言いますが、鳥はオスのほうが分散距離が短く、ヘルパーもオスのほうが多くなっています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 カラスの話』著:松原 始
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 カラスの話』
著:松原 始
「カラスはなぜ怖いのか?」がわかる本!
黒い羽を虹色に輝かせ、時に人を威嚇し、悠然と街を歩く。
不吉なシンボルとされる一方、賢さで知られる彼らの生態や魅力を面白く伝える1冊です。
「カラスはほんとは怖くない!?」
「読めばよむほど、好きになる!?」
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