覇権主義的な立場を批判する学問「民俗学」は何を研究しているのか?【眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話】

「民俗学」ってどんな学問?

覇権主義的な立場を批判する学問

 「民俗学」とは、「民=人びと」について「俗」の観点から研究する学問です。

 日本ではしばしば、民俗学とは農山漁村などに古くから伝わる民間伝承を研究するものだと思われがちです。しかし、現在の民俗学では、より広い視座に立った研究が行われています。

 民俗学が対象とする「民=人びと」の範囲は極めて幅広く、家族、親族、友人、近所や職場の人たち、日本列島の住民、全人類に至るまで、何らかの社会的文脈を共有する人びとであれば、すべて研究対象になります。

 そして「俗」について、本書監修者の島村恭則教授は以下のように定義をしています。
(1)支配的権力(覇権的なもの)になじまないもの、
(2)啓蒙主義的な合理性では必ずしも割り切れないもの、
(3)「普遍」「主流」「中心」とされる立場にはなじまないもの、
(4)公式的な制度からは距離のあるもの。
この4つのいずれか、あるいはその組み合わせが「俗」であるということです。

 言い換えれば、民俗学とは「日常のどうでもよさそうな事柄(些事(さじ))」を研究する学問とも言えるでしょう。しかし、何を「些事」と捉えるかは、立場によって異なってきます。

 つまり、何かを「些事」とみなす側の覇権主義的な立場を批判することが、「些事」に注目する民俗学が目指す視座なのです。

「民俗」の定義

「民」の範囲は伸縮自在

「民」の範囲は伸縮自在で、
何らかの社会的文脈を共有する人びとであるならば、すべて研究対象になる。 

「俗」とは?

「俗」とは、合理性では割り切れない「人間の本音」の部分に相当するもの。

(1)支配的権力(覇権的なもの)になじまないもの
(2)啓蒙主義的な合理性では必ずしも割り切れないもの
(3)「普遍」「主流」「中心」とされる立場にはなじまないもの
(4)公式的な制度からは距離のあるもの

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話』監修:島村恭則

【監修者紹介】
島村恭則(しまむら・たかのり)
民俗学者。関西学院大学社会学部長・教授。1967(昭和42)年、東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。文学博士(筑波大学)。国立歴史民俗博物館教官、韓国・翰林大学校客員教授、東京大学客員教授などを歴任。日本各地で民俗学調査を行うとともに、韓国・中国での調査・研究も行う。
近年は、世界民俗学史をふまえた民俗学理論の研究、とくに民俗学を国際的・学際的な「ヴァナキュラー文化研究」として再編成する議論を展開している。
著書に『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』(平凡社)、『民俗学を生きる ヴァナキュラー研究への道』(晃洋書房)、『これからの時代を生き抜くための民俗学入門』(辰巳出版)、『昔話の民俗学入門 民間伝承の秘密を読み解く』(創元社)、編著に『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』(創元社)などがある。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話』
監修:島村恭則


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現代の社会を知る上でも重要な学問ともいわれる「民俗学」。
そもそも「民俗学」とは「民」(=人々)について「俗」(=ヴァナキュラー)の視点で研究する学問であり、日本においては、春夏秋冬の年中行事や風習から、身近な衣食住の伝統や習慣など、都市や地方のあらゆる「文化・もの」について、歴史や謂われ、理由などが存在する。
本書では、現代にも繋がる礼儀やしきたりや祭祀、文化や風習、民間伝承、芸能、文化遺産から、昔話、怪談、(都市)伝説、B級グルメ、ネットミーム、パワースポット、七不思議伝と言われるものまで幅広く取り上げ、「現代民俗学」としてあらゆるジャンルについてわかりやすく紹介、解説する。

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