民俗学は「マッチョ」じゃない? 経営者・主婦・農民など誰でも研究者になれる民俗学の特性とは【眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話】

ほかの学問とは一線を画す民俗学の特性

民俗学は「マッチョ」な学問ではない

民俗学は、「野の学問」「民間学」「グラスルーツ(草の根)の学問」などと呼ばれます。また、民俗学は「みんなの学問」でもあります。

実際に、民俗学の学会(研究者の集まり)である日本民俗学会の会員には、大学や博物館など公的研究機関に所属する研究者以外に、会社員、経営者、公務員、主婦、教師、医療従事者、福祉関係者、宗教者、農民、議員など、さまざまな職業の人たちも多く含まれています。

民俗学は、いろいろな近代科学の中において、周辺的でトリビアル(些末)なものとみなされてきました。その一方で、民俗学は、トリビアルな存在として周辺化されてしまった人たちが自分ごとして参加でき、ものごとを考え、場合によっては互いに批判もし合いながら、自省することができる学問ともいえます。

平たく言えば、民俗学は「マッチョ」な学問ではないということです。ここでいうマッチョとは、学問および研究者の集団(学会組織など)が持つ規範性の強さのことを指します。つまり、民俗学は、権威や抑圧といったものからの自由度が高いのです。民俗学は、大学で研究している人でも、在野で研究活動を行っている人でも、そこに上下の垣根はなく、研究のスタイルも人によってさまざまです。民俗学は、まさしく“誰でも参加可能な学問”なのです。

「民俗学」の特徴

特徴① 上下の垣根のない学問

民俗学は、アカデミー(大学などの専門研究機関)と市井の一般生活者による「対等な共同研究」を理想とする。

特徴② 規範性が弱く研究スタイルが多様

「こうしなければならない」という作法・流儀上の規範が少なく、自由なスタイルや視点、発想などが許容されやすい。

特徴③ 抑圧性が低く女性の参加も多い

規範性だけでなく「抑圧性」も低い。日本民俗学会年会(年に1度の学術大会)には、女性の参加者も多い。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話』監修:島村恭則

【監修者紹介】
島村恭則(しまむら・たかのり)
民俗学者。関西学院大学社会学部長・教授。1967(昭和42)年、東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。文学博士(筑波大学)。国立歴史民俗博物館教官、韓国・翰林大学校客員教授、東京大学客員教授などを歴任。日本各地で民俗学調査を行うとともに、韓国・中国での調査・研究も行う。
近年は、世界民俗学史をふまえた民俗学理論の研究、とくに民俗学を国際的・学際的な「ヴァナキュラー文化研究」として再編成する議論を展開している。
著書に『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』(平凡社)、『民俗学を生きる ヴァナキュラー研究への道』(晃洋書房)、『これからの時代を生き抜くための民俗学入門』(辰巳出版)、『昔話の民俗学入門 民間伝承の秘密を読み解く』(創元社)、編著に『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』(創元社)などがある。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話』
監修:島村恭則


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現代の社会を知る上でも重要な学問ともいわれる「民俗学」。
そもそも「民俗学」とは「民」(=人々)について「俗」(=ヴァナキュラー)の視点で研究する学問であり、日本においては、春夏秋冬の年中行事や風習から、身近な衣食住の伝統や習慣など、都市や地方のあらゆる「文化・もの」について、歴史や謂われ、理由などが存在する。
本書では、現代にも繋がる礼儀やしきたりや祭祀、文化や風習、民間伝承、芸能、文化遺産から、昔話、怪談、(都市)伝説、B級グルメ、ネットミーム、パワースポット、七不思議伝と言われるものまで幅広く取り上げ、「現代民俗学」としてあらゆるジャンルについてわかりやすく紹介、解説する。

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