なぜ鉄の塊が浮くのか? 船が水に浮かんでいられるメカニズム【眠れなくなるほど面白い 図解 船の話】

なぜ鉄の塊が沈まない? 船が浮くしくみ

鉄製でも浮かぶ理由は形にあった

重たい鉄の塊はそのまま水に沈みます。しかし、同じ鉄でできた大型船が何万tもの荷物を積んで浮かんでいられるのは、船がただの“鉄の塊”ではなく、内部が空洞になった“箱”として設計されているからです。空気を含んだ広い空洞が体積を増やし、水を多く押しのけることで沈みにくい状態がつくられています。

船を押し上げる浮力は、物体が押しのけた水の重さと同じ大きさになります。水面下の船体が大きいほど押しのける水が増え、その分だけ浮力も大きくなるのです。重い船体が浮いていられるのは、この浮力と自重(重力)がつり合うよう形状が工夫されているためといえます。

浮力が水面下の形によらず、押しのけた水の体積だけで決まることを見つけたのが古代ギリシャの科学者アルキメデスです。「浮力は押しのけた水の重さに等しい」ことは、アルキメデスの原理として広く知られています。

さらに重要なのが、船の平均密度です。内部の大部分を空気が占めることで、船全体としての密度が水より小さくなり、自然に浮く状態が保たれます。こうした工夫によって、素材が重くても、水に浮かぶしくみが成立するのです。

鉄の船が海に浮かぶのは、決して特別な現象ではなく、物理を生かした合理的な設計のためといえるでしょう。

水の上でも安定している船の構造

一般的な船

船はなかが空洞の箱のような形をしています。その結果、船の密度が水の密度より小さくなり、水の上に浮かぶことができます。

船体断面図

< 空洞構造 >

内部に空洞があることで、船の密度は水よりも小さくなる


鉄の船が水に浮くしくみ

船に働く浮力・重力

船が押しのけた水の重さと同じだけ、水が船を水面上に支える浮力が働きます。この浮力と船の重さ(重力)がつり合えば、鉄の船でも海の上に浮き続けることが可能です。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 船の話』監修:池田良穂

【監修者情報】
池田良穂(いけだ・よしほ)
1950年北海道生まれ。大阪府立大学大学院工学研究科博士後期課程船舶工学専攻修了。同大学工学部船舶工学
科助手、助教授を経て、同大学大学院海洋システム工学分野教授に就任。退職後、現在は大阪府立大学名誉教授、大阪公立大学客員教授。
船舶工学研究活動に従事し、著作活動では船舶工学・海洋工学等に関するテーマで70冊あまり執筆。主な著書に『図解 船の科学』(講談社)、『基礎から学ぶ海運と港湾』(海文堂出版)、『船の最新知識』(SBクリエイティブ)、『船舶算法と復原性』(共著、成山堂書店)、『船のしくみ パーフェクト事典』(ナツメ社)などがある。2023年日本船舶海洋工学会「船舶海洋技術賞」受賞。雑誌、新聞等への寄稿も多く、日本における船舶の理解と認知度の向上に貢献したとして、2025年に国土交通大臣から「交通文化賞」を受賞。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 船の話』
監修:池田良穂


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