誰でも被害者になり得た…昭和の「毒物混入事件」が残した深い傷【眠れなくなるほど面白い 図解 昭和の話】

お菓子・ジュースに毒物混入恐ろしい無差別殺人事件
市販品が狙われた昭和の恐怖
昭和後期、日本社会を震え上がらせたのが、市販品への毒物混入事件でした。ターゲットを定めず、不特定多数を狙う無差別殺人が、身近な飲食物を通して行われたのです。
昭和59年(1984年)には、「グリコ・森永事件」が発生。大手食品メーカーの商品に毒物を混入したと脅迫し、実際に青酸入り菓子がスーパーに置かれるなど、消費者を恐怖に陥れました。食品流通への信頼を、根底から揺るがしたといえます。
また昭和60年(1985年)、除草剤「パラコート」を清涼飲料水に混入した「パラコート連続毒殺事件」が全国で発生しました。自動販売機に置かれたジュースに毒が仕込まれ、10人以上が死亡する事態に。これらの事件は「誰でも被害者になりうる」という恐怖を生み、家庭や学校で「知らない飲み物は口にするな」「落ちているお菓子を拾うな」といった注意が徹底されはじめました。
その後、警察や行政は自動販売機の安全対策や流通商品のチェック体制を強化し、食品衛生管理や危機管理のあり方が見直されていきます。昭和の毒物混入事件は、単なる犯罪の枠を超え、社会への信頼や飲食物の取り扱い方、消費行動そのものに深い影響を与えた出来事だったのです。
昭和に起きた毒物混入事件
昭和59年(1984年)のグリコ・森永事件や昭和60年(1985年)のパラコート連続毒殺事件
では、「誰でも被害者になりうる」という深い不安が社会に広がりました。
グリコ・森永事件 昭和59年(1984年)
江崎グリコ社長の誘拐をきっかけにはじまり、大手食品メーカーを脅迫。青酸入り菓子がスーパーに置かれるなど、消費者に強い恐怖を与えた(未解決事件)

パラコート連続毒殺事件 昭和60年(1985年)
自動販売機の受け取り口に毒入り飲料が置かれ、飲んだ人が次々と死亡。全国で被害が相次ぎ、10人以上が命を落とした(未解決事件)

日常に広がった毒物混入の恐怖
① 自販機で飲み物を買おうとする子ども
自販機の飲み物すら安心できない不安が世間に広がった

②スーパーで買い物をする母親
家庭の食卓にまで“見えない恐怖” が忍び寄った

③ 教室で子どもたちに注意喚起する教師
学校でも徹底され、子どもへの注意が日常化した

毒物混入事件は家庭・学校・街にまで影響し、人々の行動を変えました。
「誰もが被害者になりうる」という恐怖は、昭和社会を覆う共通の記憶となったのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 昭和の話』監修:町田 忍
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 昭和の話』
監修:町田 忍
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