なぜ『歎異抄』は書かれたのか? 親鸞が残したかった教えとは【眠れなくなるほど面白い 図解 歎異抄】

他力本願の教えと歎異抄の誕生

親鸞の弟子である唯円(ゆいえん)がなぜ歎異抄を書き記すことになったのか、その理由が「序」では次のように書かれています。

私(唯円)のつたない思いではございますが、親鸞聖人がご存命であったころ、現在と比べると、最近の教えには聖人から直接お聞きした、真実の信心とは異なることが多く説かれているように思えてとても嘆かわしく思います。このままでは後学のものが教えを受け継いでいくにあたり、さまざまな疑いや迷いが起きるのではないかと思います。私たちが真実の教えを説いてくださる師に出会う縁がなかったら、念仏を唱えることによって救われるという易行の門(極楽浄土の往生する)に入ることができるでしょうか。自分勝手に解釈し、阿弥陀仏の力、他力によって救われるという教えを乱してはいけません。

今は亡き親鸞聖人から直接お聞かせくださったお言葉のうち、ここに少しばかり書き記すことにします。

これはただひとえに、同じ念仏の道を歩もうとする人々の疑問を取り除きたいからです。

ー このように歎異抄の「序」では、唯円が親鸞の教えが誤って伝えられていることを嘆き、正しい教えを後世に伝えるために本書を著したことを述べています。

親鸞聖人の死後、異説があふれ混乱が見られたため、唯円は親鸞の言葉を今一度まとめなおし、『歎異抄』を通じて師の真意を伝えようとしました。

自力による修行や念仏以外の行為を重視する考え方を特に批判し、阿弥陀仏の「他力本願の教え」こそが重要であると強調しています。

真実の信心と異なる

親鸞の弟子である唯円が親鸞聖人の教えを正しく後世に伝える目的でまとめたのが『歎異抄』です。

ワンポイント!

「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と念仏を唱えるだけで、誰でも極楽に往生できるという、易しい行いによって極楽往生を目指す一派を「易行の一門」と言います。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 歎異抄』監修:山口謠司

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 歎異抄』
監修:山口謠司


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「善人なおもって往生を遂ぐ。いわんや悪人をや」――親鸞の死後に弟子の唯円が師の言葉をまとめた「歎異抄」。
仏教書の中でも、現代に必要とされる「安心」と「他力本願」の奥義がわりやすく、生きる力や癒やしにつながると根強い人気があります。700年以上前に親鸞が説いた、この今を生き抜くための名言には、「生きることはどういうことなのか」「信じた道をつき進めるか」「悪人こそが救われる」などという内容の言葉が書き起こされていますが、それは逆説的な意味合いを込めた、「明日を生きる力がわいてくる珠玉の名言」なのです。
日常生活に大いに役立つ歎異抄の世界。語り継がれる親鸞聖人の言葉は、現代社会に大きな影響を与えているといってもいいでしょう。
本書は歎異抄の世界をひもとき、親鸞聖人の考え方をどのように応用すれば、厳しい現代社会を生き抜くことができるかを、図やイラストをふんだんに使い、わかりやすく解説した一冊です。

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