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大谷翔平の「構え」。軸足へのこだわり【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

無双状態の大谷翔平

 MLBは、さる6月24日(現地時間)に週間MVP(6月17~23日)を発表し、ナ・リーグではドジャースの大谷翔平を選出した。5月の第1週に続いて今季2度目の受賞。エンゼルス時代を含めると通算9回目だ。

 何より成績が素晴らしい。打率4割5分8厘、4本塁打、11打点、出塁率5割6分7厘、長打率1・083、OPS1・650。無双状態だ。

 大谷は週間MVP9回のうち5回を6月に受賞している。“6月男”と呼ばれる所以だ。21年6月・7月、23年6月・7月に続く、通算5回目の月間MVPにも十分、手が届きそうだ。

 大谷がバッティングで最も重視するのは「構え」である。「そこさえ決まれば、右(投手)も左も関係ない」と以前から語っている。

 実際、週間MVP対象期間の4本塁打のうち3本はサウスポーから放ったもの。打球は3本ともバックスクリーン方向に飛んだ。

 大谷がバットを地面に置く新ルーティンを始めたのは、6月14日のロイヤルズ戦からだ。三塁線とホームベースの斜辺の延長線上にバットを置き、グリップエンドの位置に軸足の左足を乗せるのだ。

 大谷は語っている。

「同じ位置で同じように構えるのが、同じようにボールを見ることに対して一番大事なこと。球場によってラインの太さとかが違う。ずれたりすることがないように」

 大谷にとって軸足を置く位置の設定から始まるフォームの構築は、ビル建設における基礎工事のようなものか。

 日本でも、かつて「構え」にとことんこだわった選手がいた。史上最多となる3度の三冠王に輝いた落合博満だ。

 彼は代名詞の“神主打法”について、こう説明している。<バットを正眼に構えるというか、胸の前で倒すように突き出すと、ヒジは中に入りにくいはず。ロッテのユニホームの側面にある縦のストライプより後ろにヒジがいかないようにするんだ>(自著『なんと言われようとオレ流さ』講談社)

 こんな、こぼれ話も。

<どうも構えがしっくりいかないので、ホームベースを見直してみたら本当にベース盤が曲がっていたんだ。オレの場合、ベースを目安にして立つから、これだと困る。川崎球場も曲がっているし、後楽園や西武球場あたりもそうだ。ホームベース、マウンド、セカンドベースの三点を結んだラインだけは、どの球場も真っ直ぐにしてほしいものだ>(同前)

 ちなみに落合は秋田工高建築科の出身である。昔取った杵柄、ということか。

初出=週刊漫画ゴラク2024年7月12日発売号