昨年4月にプロボクサーに転向
日本がボクシングの“バンタム級王国”であることは、「週刊漫画ゴラク」6月14日号で詳述した。
現在、世界バンタム級はWBAが井上拓真、WBCが中谷潤人、IBFが西田凌佑、WBOが武居由樹と、いずれも日本人が主要4団体の王座を独占している。
この4強に殴り込みをかけそうなのが、キックボクシングの世界で敵なしを誇り、昨年4月にプロボクサーに転向した那須川天心だ。
さる7月20日、東京・両国国技館で行なわれた自身初の10回戦で、WBA世界バンタム級4位のジョナサン・ロドリゲス(米国)相手に3回1分49秒TKO勝ちを収めた。
天心にとってはボクシング転向4戦目。相手は初の世界上位ランカーということもあり真価が問われたが、終わってみればワンサイド。試合直後にマイクを向けられると「(僕が)KOできないと言ったのは誰ですか?」とアンチを挑発する余裕まで見せた。
2回終了間際、左ストレートでロドリゲスをダウン寸前に追い込んだ。天心は極真空手の経験者だが、正拳突きのような一撃に、館内がどよめいた。
3回、右をフェイントに使って、再び左ストレートをクリーンヒット。左アッパーに右フック、ボディブローも交えながらダメ―ジを与え、最後は左ストレートでとどめを刺した。
天心が素晴らしいのは、上下の打ち分けである。連打の最中、必ずボディブローを交え、相手のガードを下げさせるのだ。攻撃の組み立てが立体的かつ計画的で、格闘IQの高さを窺わせた。
そして何よりディフェンスがいい。この日もクリーンヒットを一発も浴びなかった。
「すべてのパンチが見えていた」というのは、常に自分の距離で闘っていた証だろう。半身で構えるサウスポースタイルは、相手からすればやり辛いはず。天心は遠い距離から一気に踏み込むだけの馬力も備えている。
話を聞いていて「一皮剥けたな」と感じた。
「相手が気を抜いている時に打てる。(相手の)呼吸やタイミングを読んでパンチを入れられた」
ダウンを奪ったパンチ、フィニッシュブローについて、天心は「感触はなかった」と言った。どうやら倒すコツを掴んだようだ。
タイミングはもとより軌道、角度、ナックルの返し……どれもがパーフェクトだった。
「バンタム級の世界王者は(日本に)4人もいる。そろそろどうですか?」と天心。帝拳ジムの本田明彦会長は「25年末までには世界戦になる」と明言している。
初出=週刊漫画ゴラク2024年8月9日発売号