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ジャイアンツOBでDeNAベイスターズ初代監督を務めた中畑清さんが初登場! 笑いあり涙ありの絶“口”調ぶりにファン130人が酔いしれる! 【「ラブすぽ」トークショーレポート】

Text:下村泰司

横浜DeNAベイスターズが日本一になった2日後、チームの礎を築いた中畑清さんが「ラブすぽ」初登場!

中畑清

プロ野球のオフシーズンは現役選手を中心に、シーズン中はOBの方をメインにゲストをお招きして行っているリアルトークイベント「ラブすぽ」。今回のゲストは、ジャイアンツOBで横浜DeNAベイスターズの初代監督を務めた絶好調男、中畑清さん。日本シリーズで横浜DeNAベイスターズが26年ぶりの日本一を決めてからわずか2日後という実にタイムリーなゲスト登場ということで、プレイボール前から会場に詰め掛けたベイスターズファン、ジャイアンツファン、プロ野球ファン総勢130人のお客さんはなんだかいつも以上に熱を帯びているようでした。

かくいう私も野球を始めた小学校3年生の時、3度のサヨナラ試合で後に語り継がれることとなった1983年の伝説の日本シリーズ「巨人対西武」、第3戦の中畑清さんのサヨナラタイムリー、第6戦3勝2敗で巨人が王手をかけた試合で9回に中畑清さんが逆転タイムリー3ベースヒット放った試合(巨人は9回裏に追いつかれ、延長10回サヨナラ負け)を現地観戦してすっかり中畑清ファンでしたので、いつも以上に前説から燃えていました。
昔、選手名鑑にまだ選手の住所が掲載されていた時に、ご自宅までサインを貰いに行った際に心よく応じていただいた際のお礼をようやくお伝えできました。

日本一の瞬間、絶好調男が見せた涙のわけとは?

まだプレイボール5分前だというのに会場袖から会場を覗き込んでは,、手を振るファンに手を振り返す流石のファンサービス。中畑清さん、プレイボール前から絶好調でした。
そして19時に盛大な拍手で迎えられ、無事プレイボール。中畑清さんは開口一番「いつもは俺の後援会からサクラが大勢来るんだけど今日はサクラがいない。初めての方ばかりで嬉しいよ」とつかみトークがいきなり炸裂!「ラブすぽ」恒例の会場を練り歩いての写真撮影に、普段の2倍の時間をかけてステージに戻ると司会のDJケチャップさんから「横浜DeNAベイスターズ、日本一おめでとうございます!」と声をかけられます。すると会場から、さらに大きな拍手が送られました。

中畑清

中畑清さんは「俺が監督で優勝したみたいだな」と笑いを誘っていましたが、続けて「優勝した瞬間、もちろん嬉しかったんだけど何かが足りなかった。」と語り出します。何が足りなかったのか考えてみたら、監督就任した年のシーズンオフに亡くなられた奥様に、当時なかなか勝つところを見せられなかったから超満員のハマスタで、教え子たちが日本一になった姿を奥様に見せたかった、とのこと。「夢を叶えてあげたかった。そこだけが足りなかった」と。

第6戦、テレビ中継で解説を務めた際、日本一の瞬間に涙声になったのはそういう思いがこみ上げてきたそうです。雨で1試合順延になったことで、中畑清さんが始球式、解説を務める試合に日本一が決まる巡り合わせになったことに「ハマったな、ハマスタだけに」とまず最初のオヤジギャグが炸裂。
ケチャップさんから「かつての教え子、第6戦で先制のホームランの筒香選手、シリーズMVPの桑原選手から優勝報告の連絡ありました?」と聞かれると「全く無かったキヨシ(中畑清)、それが腹立つノリ(原辰徳)」と二重三重に被せてくるあたりはさすが絶好調男ですね。立て続けのオヤジギャグも、中畑清さんが言うとなぜだか周囲が笑顔になるのが不思議です。

中畑清

意識改革からスタートした横浜DeNAベイスターズ元年と、監督就任の舞台裏

当時を振り返って「初年度は本当にしんどかった」とおっしゃる中畑清さん。監督就任会見で初めて現場に行ったときの話を披露してくださいました。「フロント、現場が一緒になって本気で戦う集団になって行きましょう!」と元気よく挨拶し、そこから“中畑ベイスターズ”元年はスタートしたそうです。監督でありながら営業本部長だと思っていたそうで、とにかく成績が上がってこないチームでありながらメディアに露出してもらえるかを常に考えていたそうで、テレビでは編集し易いようにコメントは短めに、新聞では写真を載せてもらえるようネタを提供していたそうです。だからキャンプ中インフルエンザに罹患した際も、ホテルの窓から手を振っていたという話は会場が大爆笑でした。

横浜DeNAベイスターズの当時の高田繁ゼネラルマネージャー(GM)から監督の打診を受けた時の話に及ぶと「普通さ、監督就任の時って、球団の代表者が黒塗りのハイヤーで来るんだよ。でも俺の時は高田さん、いくら家がご近所だからと言ってママチャリでジーパンで来るか?」とここでも爆笑を誘います。そして「若い監督候補がいるんだけど、交渉が難航することが予想される。保険なんだけど、もしその人に断れたら監督やってくれないか?」とあけすけにお願いされた話も披露。本来二つ返事で「わかりました!」と答えたいところではあるんだけど、「もう一度その方にお願いをしてください。それで、もしその方から正式に断りの返答があった場合、引き受けます」と回答したそうです。後にこの回答が非常に誠実だったということで、新制中畑ベイスターズが誕生したそうなんです。このあたりの「謙虚で誠実なところが、俺のいいところなんだよな」って最後、中畑清さんご自身で仰ってました。(ここでも大爆笑)

もともと現役の頃から、「将来は監督をやりたい」とずっと思っていたそうです。でも、ここから中畑清さんのおどけたトークがさく裂。「最初は、現役時代を過ごした球団でと思っていたんだけど、なかなか声がかからなくてさぁ、自分より後輩が監督に再登板した際に、もう声がかかることはないと思って、ライバルチームの監督を引き受けたんだよ」とエピソードが披露されると、会場から「おお!」という驚きの声が! どこまで本気なのか、冗談なのかわからないながら、サービス精神が旺盛なんですね。会場が盛り上がると、中畑清さんも嬉しそうで、みんなが笑顔のままトークショーが続きます。

ジャイアンツ時代のライバルの話

絶好調男、中畑清さんの「すべらない話」は尽きません。トークはジャイアンツ時代のライバルの話に。当時、中畑清さんは三塁手のレギュラーポジション。同じく三塁手を守る選手が二塁手にコンバートされて、自分は三塁のレギュラーポジションを勝ち取ったと思っていました。ところが、ある試合で中畑さんがプレー中に左肩を脱臼してしまい、止むなく途中交代となったそうです。その際に中畑清さんの代わりに、レギュラーポジションを争った選手が二塁から三塁に回る際の場内アナウンスが起こると、当時の後楽園球場の満員のお客さんが一斉に沸いたそうです。この時に、中畑さんは潔く三塁のポジションを譲ろうと思ったそうです。

プロの厳しさと、中畑清さんの潔い覚悟に、会場から憧れと尊敬の混じった目が注がれます。その直後、「今思えば、その選手が二塁の守備に就いている際に、打者ではなく三塁の俺の方を見て“怨念”を送ってくる。そういう奴が二塁に“おんねん”!」。さすがのDJケチャップさんも「拍手いらんから」と盛り上がるお客さんに突っ込んでいました。

中畑清

すると「いつもトークショーの時には、プロフィールを紹介してくれるんだけどしないのか」と少々語気強めの中畑清さん。「あれ、中畑清さん、気分を害したかな?」と思わせたのが、そもそものフリでした。「仕方ないから自分で言います」と中畑清さん自ら「7年連続ゴールデングラブ賞」と話しはじめると会場からは大きな拍手が沸き起こります。自らの栄光を、自ら語りはじめました。そして「三塁から一塁にコンバートされてから、ゴールデングラブ賞やオールスター出場を果たした。ライバルがいなかったら、タイトルも今の自分も“無かったキヨシ(中畑清)”」と満面の笑み。ケチャップさん「いちいち拍手せんでええて」と言いながら、自分も笑ってました。

印象に残った監督たちの裏話

いろんな監督のもとでプレーした中畑清さん。そんななかで、将来監督をやってみたいと思わせてくれた監督として真っ先に藤田元司さんを挙げられました。ひと一言でいえば考え方が、大人とのこと。藤田元司さんは現役生活を終えてから、会社勤めを経験されたりして、そこから再びユニフォームを着られた方。上に立ってチームをまとめることについて長けていたそうで、チームをまとめるにあたって、主力選手を気遣うのではなく、周りのスタッフ、裏方さんに目配り、気配り、思いやりをすごくされてて、それがとても大人に見えてかっこよかったそうです。

そしてONの話題になると「ONは別格」と一言。特に長嶋茂雄さんの、プロとしての切り替えの早さ、上手さは印象に残っているそうです。とある試合で先制を許した2回に、ベンチ裏でたまたま長嶋茂雄さんと2人になった時に「キヨシ、今日の試合は負けだな」と言われたそうです。中畑清さんはまだ2回なのに何を言い出しているんだろうと。でも結局、その試合で中畑清さんはチャンスで打てず、そのまま巨人は敗退。一目散にベンチ裏に消えていった長嶋茂雄さんは、試合序盤に敗北を予言しておきながらも、怒りがおさまらない様子だったそうです。
それなのに、そのまま監督室に向かう際、お風呂を浴びるためにユニフォームを脱ぎ捨て、監督室に到着する時には、すでに素っ裸! 一方の選手たちは試合に負けたこともあって、ロッカールームの雰囲気は真っ暗。一番風呂は監督という決まりがあったので、暗い雰囲気のままお風呂の順番を待っていたそうです。すると一番風呂に向かう長嶋茂雄さんがロッカーの前を横切るときに、素っ裸でタオルを頭の上でグルグル回しながらスキップしながら「みんな、お疲れさまー!」って明るく通り過ぎたとのこと。
「いくら何でも切り替え早過ぎだろ!」と思ったそうですが、選手たちが一気に明るさを取り戻し「監督が明るいのに、選手たちが悩んでいてもばかばかしい」とロッカー内が笑顔に包まれたそうです。特別な言葉をかけることなく、選手の気持ちを切り替えさせることができる特別な人だったとのこと。

また、負けた試合の後に長嶋さんとお風呂場で遭遇した時には、チャンスで打てなかった中畑清さんに「うーん、どうしたキヨシ、元気ないぞ」となって、そこからお風呂場で2人とも素っ裸で打撃フォームのチェックがはじまったそうです。「打撃で一番重要なのは下半身だろ」と言われ、そこからマンツーマン指導。でも2人とも素っ裸ですからね。ここから先の詳細は割愛しますが、「ベチン! ベチン!」という音が、お風呂場の中で響いていたそうです。

未経験だった、日本代表監督の大プレッシャー

その長嶋茂雄さんが、アテネ五輪の代表監督のときに急きょ体調不良になり、長嶋茂雄さんに代わって指揮を執ったのが中畑清さん。当時を振りかえって一言「思い出しだくない、本当に苦しかった」と。「日の丸のプレッシャーって、日本シリーズやその他の大事な試合と比べても比じゃない。とにかく別世界。」だったそうです。加えて長嶋茂雄さんの後を継いで以上「金メダル獲得」が必須というムードがあったそうです。「日本の野球が世界一なんだと証明するために、長嶋茂雄さんが集めた日本代表。長嶋さんが志半ばで一番悔やんでいる。そんなバトンを受け取ってみろ。しかも自分は日本のプロ野球で監督経験も無かったキヨシ(中畑清)。なんだから」と、このシリアスな話の中でも、持ちギャグが飛び出しました。

でも「あのプレッシャーのかかる役割を、長嶋茂雄さんが与えてくれたんだ」と後に思えたそうです。日本代表を指揮したのは、まさしく「人生を大きく変えた出来事」だったそうです。この経験があったから、横浜DeNAベイスターズの監督になった際、何度負けてもいい意味で全然動じなかったそうです。

と、ここまで約1時間ちょっと、どんだけ笑ったことでしょう。

ここからは「ラブすぽ」恒例の2ショット撮影タイム。今回はじめて参加された方も多かったのですが、皆さんとても協力的でスムーズに撮影は進行。昔の中畑清さんの掲載雑誌を持参してくれた方、撮影時に感激のあまりに泣き出す方もいたり、中畑清さんの過剰サービスもあり、皆さん大盛り上がり!

撮影タイム終了後、いよいよ後半戦。これも「ラブすぽ」恒例の、昔のフォーム再現コーナー。中畑清さんにバットをお渡しすると、バッティング教室がスタート!やはりバットを持つと血が騒ぐんでしょうね。熱血指導は長嶋茂雄さん譲りでした。安心してください。ちゃんと洋服は着てますので(笑)

中畑清

中畑清

中畑清

その後、質問コーナーに移っていきましたが、今回の質問コーナーはいつもとちょっと雰囲気が違っていました。質問というよりは、中畑清さんに感謝を伝える方が非常に多くて驚きました。中畑清さんが横浜Dena監督時代、ホーム最終戦で、最終戦セレモニーの時も帰らずに残ってくれた相手ファンにもお礼を述べていたのが印象的だったというお客さん。当時、横浜DeNAベイスターズではなく、対戦相手がCS進出するパターンが多かったそうで、セレモニーの監督あいさつで「よかったね、CS出場できて、っていうと相手ファンが盛り上がるんだよな」と、感謝するお客さんに向かって、すぐに裏話を披露してお返しをする中畑清さん。その他、早くにお母さんを亡くされた方、病気がちで気持ちを前向きになかなか向けられない方からの悩み相談などもありました。でもその方たちも、中畑清さん流のアドバイスを貰い、最後は笑顔で元気になっていました。DJケチャップさんも思わず「ここに歩くパワースポットあるから。他に元気貰いたい方はいないですかー?」

中畑清

ということで非常に濃い、あっという間の2時間でした。そして最後に最高のサプライズが待っていました。中畑清さんから会場の皆さんに最後のご挨拶の際、中畑清さんが歌をプレゼントしてくれました。奥様を亡くされた中畑清さん、みんな原点に戻ってまた頑張って行こうというメッセージが込められた名曲。皆さん、噛みしめるように耳を傾け、最後に涙を流していた方も一人二人ではなかったキヨシ(中畑清)でした。

中畑清さん、これからも絶好調でお願いします! そして参加された皆さんも本当にありがとうございました!

中畑清

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