敵をとにかく観察せよ!
孫子は戦争に勝つためには、慎重に敵を観察することが大切とし、その際の注意点についてこう書いている。
よく見ていればとても多くの情報が得られる
敵兵が杖にすがってやっと立っているのは飢餓に瀕している証拠。水汲く み係が水を汲む前に自分の喉のどを潤うるおすのは全軍が渇きに苦しんでいる証拠。多数の鳥が止まっているのはすでに敵兵が陣を払った証拠。旗はた指さし物ものの動きが激しいのは戦列が混乱している証拠。
攻勢に出る好機なのに実行に移さないのは敵兵が心身ともに困憊している証拠。夜中に呼び交わす声がするのは怯おびえて仲間の所在を確認している証拠。輸送用の牛馬を殺し、その肉を食べているのは追い詰められて死に物狂いになっている証拠。
やたらに恩賞を下しているのは士気の低下に苦しんでいる証拠。兵士にやたら罰を下しているのは兵士が命令に服さなくなった証拠――といった具合である。
このように昼夜をとおして敵の観察をし続ければ、いつ攻撃をしかけるのが最適か、どこに攻撃を集中させるのが最適かはっきりと見極められ、味方の損失を最小限にしながら確実に勝利を得ることができる。
多少時間はかかろうとも、勝利に終わればいうことなしということだ。 ここまで徹底した人間観察を行なう孫子の慎重さは、戦争に限らず、現代社会の多くの場面で見習うべき姿勢であろう。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』
著者:島崎晋
新紀元前500年頃、孫武が勝負は運ではなく人為によるとし、その勝利の法則を理論化した兵法書。情報分析や見極め、行動の時機やリーダー論等、現代に通じるものとして今も人気が高い。「名言」を図解でわかりやすく紹介する。
公開日:2021.08.02