進むときは常に道の状況とその後の展開を想像することが大切
孫子は、指揮官には戦場とそこへ至る地理・地形にかんして把握しておかねばならない六つの道理があるという。それは、四方に開けているところ、途中に行軍を滞らせる難所のあるところ、脇道が分岐しているところ、道が急に狭まっているところ、高く険しいところ、さらに敵軍との距離についてである。
四方に広く通じ、開けている場所を見つけたなら、敵軍よりも先に高地の南側に陣取り、補給路を確保しなければならない。行軍を妨げる難所を見つけたら、その先に敵の防御陣地があるかどうかによって態度を決めよ。
道の分岐点を見つけたら後退して、敵がそこに差し掛かかるのを待って攻撃を仕掛けよ。隘路に出会ったら敵味方のどちらが先着したかによって態度を決めよ。
高く険しいところでは、自軍が先着した場合にはその南側に陣を張り、敵の来襲を待ち受け、敵に先着されたなら後退して様子を見よ。
さらに、両軍の陣地が遠く隔たっていて、兵力が互角のときには先に戦いを仕掛けてはならないということである。
この孫子の教えはリーダーに安全管理を説くものである。チーム全体が目的地、あるいはなんらかの目標へと行き着くためには、常に先行きの危険に気を配り、その対処法を考える慎重なリーダーの存在が不可欠なのである。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』
著者:島崎晋
新紀元前500年頃、孫武が勝負は運ではなく人為によるとし、その勝利の法則を理論化した兵法書。情報分析や見極め、行動の時機やリーダー論等、現代に通じるものとして今も人気が高い。「名言」を図解でわかりやすく紹介する。
公開日:2021.08.23