他人の意見を知ることで批判が加速する
大小の差こそあれ、いまや毎日のように起きているのがインターネットでの炎上騒動です。有名人の不適切発言やスキャンダル、バイトテロと言われる動画の公開、公務員や企業による不祥事など、ひとたび話題になれば、たちまちSNSで拡散。本人や企業のアカウントには、大量の非難が寄せられる事態となります。
こうしたインターネットでの炎上で特徴的なのが、批判が過激化していくというものです。相手の人格を否定するようなものから、差別的な発言、さらには「死ね」といった直接的なものまで罵詈雑言が並びます。なぜインターネットでの炎上は激化しやすいのでしょう。
その理由のひとつとして考えられるのが「社会比較説」と「集団極化」です。社会比較説とは、他者の多くが自分と同じ意見であることで自分の意見に自信を持ち、その考えがより強化されることです。
集団極化は、集団で討論する際、メンバーにリスキーな意見の人が多ければ、集団での意思決定もよりリスキーに、逆に安全志向の人が多いとより安全に偏かたよる傾向のことです。
インターネットの世界というのは、自分と同じ意見の人を見つけやすい環境であり、自分と同意見のみ見聞きする、あるいは同意見のコミュニティーに参加することで、集団極化も起きやすくなります。
加えて、沈黙の螺旋や反対意見を軽視する集団的浅慮なども発生しやすく、これらが複合的に合わさることで、激化しやすいと考えることができます。また、匿名であるというのも激化しやすい大きな要因のひとつでしょう。
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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?
日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。
この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。
明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう
この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした
ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。
会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。
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【書誌情報】
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監修:亀田達也
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公開日:2023.06.10