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身体が不調の時、改善するノウハウ! 覚えておくべき〇方向運動と〇部位運動【スポーツ障害予防の教科書】

Text:土屋真人

〇方向運動と〇部位運動

本人の感覚を基にした不快感がない運動が原則

動きケア®は、「〇方向運動」へ身体を動かすことを原則にして、痛みや不調を改善していくノウハウです。○方向運動とは2つの意味があります。まずひとつめは、「動かしやすい」「よく動く」「気持ちいい」などの快感覚がある方向への運動という意味です。もうひとつは、「痛い」「動かしにくい」「違和感がある」などの不快感覚がある運動方向の逆の運動という意味です。いずれにせよ本人は「痛み」や「不快感」を感じるストレスを極力少なくして改善へ向かうことができるわけです。「痛み」を感じながら身体を動かすことは強いストレスです。注意しないと脳にも悪影響を与え、痛みが増幅したり、長引くことにつながるため、動きケア®では○方向運動の原則を大切にしているのです。ちなみに痛みを感じる方向への運動は「×方向運動」、痛みはないけどやりにくさなど不快感を伴う方向への運動を「△方向運動」と呼んでいます。

〇方向運動で重要なことは、見た目の可動域よりも本人の感覚を優先することです。外からみてわかる関節可動域は、筋や関節などの部分的かつ少ない情報による判断です。それに対し、本人の感覚は身体の中にあるあらゆる器官からの情報を総合的に判断した答えです。その判断情報量の多さから考えると、見た目の可動域よりも本人の感覚を優先して「〇方向運動」を決めるほうが最適な結果につながります。例えば、可動域は広くても選手が「痛い」と感じれば、その運動方向は「×方向運動」になります。ボトムアップ理論に代表されるように、選手たちの中から答えを引き出していく指導が増えてきました。そう考えると○方向運動も答えは選手の中にあるわけですから、選手の感覚と自分の身体への意識を引き出す指導としても使えるようです。

また動きケア®には、〇部位運動の考え方もあります。〇部位運動とは痛みや不調がある部位以外の部位の運動を指します。例えば、腰痛(骨盤部の痛み)の場合、そのとなり部位である股関節や胸郭部、さらには他部位の基本運動に十分できない動きがあって腰痛の要因になっていることが多いのです。その場合、痛いのは腰ですが、痛くない他部位の動きをよくすることで改善につながります。これが〇部位運動の考え方です。

〇部位運動の例【スポーツ障害予防の教科書】

〇部位運動の例

不調部位が腰(骨盤部)の場合、骨盤部のとなり部位から順にみていき、十分にできなくなった基本運動をできるようにしてあげます。

出典:『スポーツ障害予防の教科書 姿勢と動きのコンディショニング』

【書誌情報】
『スポーツ障害予防の教科書 姿勢と動きのコンディショニング』
土屋真人

スポーツと姿勢は重要な関係にあり、姿勢が歪んでしまうと筋肉・柔軟性・可動域・バランスなどに影響を及ぼします。姿勢はちょっとしたことでも狂ってしまいますが、その修正方法を多くの選手は知りません。本書は姿勢を改善することでパフォーマンスをアップさせるとともに、ケガの予防にも役立つために、なぜ不調や痛みが生じるのか、どこの姿勢が狂っているのが原因なのかをわかりやすく解説し、その改善方法やトレーニングについてイラストと写真でビジュアル的に紹介します。人によって不調が生じる部分は様々です。首、肩。胸郭部、背中、腰、股関節、足、などの各部位ごとに必要な柔軟性をチェックし、不調の整え方、効果的なトレーニング、改善方法を、トレーナーを指導する体育協会理事長の著者が徹底解説する初めての一冊になります。