選手とスポーツディレクターの二刀流! 最年長、宮田諭の存在感!
選手、運営、トヨタ社員――46歳の”レジェンド”宮田諭が語るTUBC立ち上げの苦難
B3参戦3シーズン目を迎えた東京ユナイテッドバスケットボールクラブ(以下TUBC)が、開幕から好調を維持している。第6節を終えた時点で5勝敗と岩手ビッグブルズ、横浜エクセレンス、香川ファイブアローズに次いでリーグ4位。過去2シーズン、プレーオフに進みながら昇格を逃した悔しさをバネに、さらなる飛躍を予感させるに十分な戦いぶりだ。
開幕3戦目の岩手戦では本拠地・有明アリーナに今シーズンのB3最多観客となる9385人を動員するなど、実力も人気もB3トップレベル――。そんなチームを語るうえで欠かせない存在がいる。
宮田諭――。1978年1月9日生まれの46歳。現役のプレイヤーとしてはBリーグ最年長の“レジェンド”だ。
【全2回の第1回】
東京都立国立高校、早稲田大学を経て2002年にNECに入社。サラリーマンとして働きながらクラブチームのエクセレンス(現横浜エクセレンス)でプレーを続け、2004年に渡米。独立リーグABAのオンタリオ・ウォリアーズでプレーした後、2005年に国内トップクラブのトヨタ自動車アルバルク(現アルバルク東京)に入団した。
2010年にアルバルクを退団後は古巣のエクセレンスにコーチ兼任として復帰。2022‐23シーズンからはB3に新規参入したTUBCに移籍し、チームの初代キャプテンを務めた。
TUBCの選手やスタッフに話を聞くと、必ずと言っていいほど「宮田諭」の名前が挙がる。今シーズンからチームに加入した田口暖、長尾光輝の2選手は移籍の決め手のひとつに「宮田さんの言葉」を挙げ、新たにヘッドコーチに就任した橋爪純も、新天地で指揮を執ることになった理由のひとつに「宮田さんの存在」を挙げる。
また、チーム初年度からプレーをともにする現キャプテンの川島蓮、上田雅也、小倉渓らは「宮田さんが練習しているのに、僕らがやらないわけにはいかない」「本当に、バスケが大好きなおじさん」と、その存在感の高さを語る。
エクセレンス時代は選手とGMを兼任していたが、TUBCでも選手兼スポーツディレクターとして、プレーのみならずマネジメントや選手獲得など、多岐にわたる分野でTUBCを支えている。
ちなみに2010年にアルバルクを退団した際、チームは離れたが「トヨタ自動車」には籍を置き続け、バスケ選手とは別にレクサスの広報などを歴任。現在も人事部門に籍を置きながら選手、チーム運営、トヨタ社員という「3足のわらじ」を履いて現役を続けている。
そろそろ引退と思われていた?
2022‐23シーズン、B3に参入したTUBCに声をかけられた際のことを、本人はこう語る。
「チーム立ち上げにあたって、誰か運営経験があるヤツはいないのか……と声をかけてもらったんだと思います。たぶん、『そろそろ引退する』と思われていたんですよね(笑)。話をもらったときは『面白そうだな』と感じたのと同時に『自分が経験してきたノウハウを人に伝えられるチャンス』だと、お世話になることに決めました」。
大学卒業後やアルバルク退団後に所属した横浜EXへの愛着はもちろんあった。宮田さん本人も「本当ならエクセレンスで引退したいと思っていた」と語る。それでも、40歳を越え、プレイヤーとしても、それ以外の面でも新たな挑戦ができる舞台に、TUBCを選んだ。ただ、チーム立ち上げ当初は苦難の連続だった。
「選手集めはもちろんですが、それ以上に大変だったのがスタッフ集めです。変な話、選手はトライアウトを実施すればけっこうな人数が集まってくれる。ただ、スタッフはバスケ業界的に見ても圧倒的に数が足りない。だから今、トレーナーやマネージャーとして働いてくれているみんなには、本当に感謝しています」
選手の獲得はもちろんだが、スタッフィングの充実も、チームの強さにつながる。
「たとえばB1であればスタッフが15人います、みたいなチームもありますよね。でも、それが決して多すぎるというわけではない。ましてやB3だとそんな人数は確保できないわけで、スタッフが全員、本来の業務とは違う部分のサポートもしてくれている、というのが現状です。トレーナーがマネージャー的な仕事をしてくれたり、通訳が雑務をこなしてくれたり、そうやってみんなが『やれること』を最大限こなしてくれることでチームは回るし、それが結果にもつながると思っています」
【第2回へ続く】
写真・TUBC提供
文・花田 雪
公開日:2024.11.14