人類の夢「若返り」が実現できる!?
iPS細胞で老化細胞を初期化
若返り。お化粧やファッションで若々しく見せることはできても、根本的な若返りはまず不可能。長くそう考えられてきましたが、生命科学は、この不可能も可能にしてくれそうです。ここで登場するのが、あのiPS細胞の因子。2022年、イギリスのバブラハム研究所のグループが、ヒトの皮膚細胞にiPS細胞にも使われる山中因子を誘導することで、30歳ほど皮膚細胞を若返らせることに成功しました。
ベストセラー『LIFESPAN老いなき世界』の著者、デビッド・A・シンクレア教授のグループも、山中因子の3つの遺伝子の誘導で、高齢マウスの視力回復を実現しています。さらにアメリカとスペインの研究グループの実験では、4つの遺伝子の誘導で、早老症マウスの腎臓、肝臓、膵臓の機能が回復。寿命が大幅に延びたことが報告されています。
そして、iPS細胞を発見した、当の山中伸弥教授もすでに2021年、iPS細胞の技術を使った「若返り」の研究に力を入れることを発表し、研究機関と企業との連携による実用化を推進しています。
実験の多くはまだ動物段階なので、ヒトへの実用化は少し先のことになるでしょう。iPS細胞の状態によっては奇形腫発生の可能性もあるので、慎重な応用が必要です。
iPS 細胞による若返りのひみつ
化粧品メーカー・コーセーと山中伸弥教授の研究チームによる共同研究で、iPS 細胞の若返り機能を実証。染色体の末端にあるテロメアの長さによって、iPS 細胞は、体細胞の年齢にかかわらず、正常に機能することがわかった。
同一人物によるテロメアの実験
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』著:高橋祥子
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』
著:高橋祥子
『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』は、生命科学の基本概念を分かりやすく解説した書籍です。生命科学は、生物の構造や機能、進化などを研究する学問ですが、専門的な知識が必要で、難しく感じることも多い分野です。しかし、この本では、豊富な図解やイラストを使い、専門用語や複雑な内容をわかりやすく噛み砕いて説明しています。
特に、DNA、遺伝子、進化、免疫など、私たちの体や生命現象に関わる重要なトピックを、科学的な視点から解説しつつ、日常生活に関連づけて説明しています。初心者でも理解できるように配慮されており、難解なテーマでも「なるほど」と納得できる構成になっています。この本は、生命科学に興味があるけれども専門的な知識がない方、または生物学を学んでいる学生など、幅広い読者におすすめです。
公開日:2024.10.28