試合前日から体調をととのえる
「試合の日は何を食べればいいですか?」「試合の日、食べてはいけないものはありますか?」など、試合当日の食事・補食のとり方について多くの質問を受けます。今回は、基本の考え方についてお話します。
私は、試合日のポイントは2つあると考えます。
①試合当日、朝起きた時に「お腹が空いた」「食欲がある」など、ごはんを食べられる状態
②試合が始まる頃には、なるべく胃の中を空っぽにする
①は、試合で存分に力を発揮するために、試合に必要なエネルギーを十分に補給したいです。試合当日にごはんを食べられるように食欲がある状態にするには、試合前日から体調をととのえたいです。
まずは、試合前日の夕食は、あぶらの多い料理、食品を控えます。昔は、「敵に勝つ」ということで「ステーキ&とんかつ」をゲン担ぎで食べられていたことがあります。しかし、ステーキ(部位による)、とんかつは、あぶら(脂・油)の多い食品・料理です。あぶらは、消化吸収に時間がかかります。試合前日にあぶらの多い料理を食べすぎると、睡眠中も内臓が消化吸収するために動いています。その結果、内臓が休めないまま朝を迎え、胃もたれなどにより食欲がでず、ごはんが食べられなくなります。もし、ステーキや揚げ物を食べたい時は、ヒレステーキ、モモステーキなどの脂質の少ない部位のステーキを、揚げ物は、フライや天ぷらではなく、から揚げを選んでください。
以前、全国大会に出場経験のある高校野球部の指導者に話を聞きますと、「試合の前日は鍋料理を食べるようにしている」と言われました。鍋料理は、だし汁に食材を入れて作りますので、余分なあぶらの取り過ぎを控えられます。さらにシメにおじや、うどんを食べますので、エネルギー源となる炭水化物を補給しやすいです。私はこの話を聞いてから、他チーム、他競技の選手、指導者、保護者へ鍋料理を提案しています。
試合当日の食事について
先述②の通り、試合が始まる時は、なるべく胃の中を空っぽにしたいです。消化中の食べ物が胃にたくさん入ったまま、身体を動かすと気持ち悪くなったり、腹痛を起こしたりすることがあるからです。一般的な食事の消化吸収時間は、3~4時間かかります。従いまして、食事は初戦の3~4時間前までにすませましょう。また、試合当日の食事は、通常の食事と少し変わります。通常は強い身体を作るためにバランスよい食事、エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などを十分にとれる食品を組み合わせて食べています。
しかし、試合当日の食事・補食は、身体を動かすエネルギー源となる炭水化物と汗で失われた水分を中心に補給します。例えば、ごはん、うどん、卵焼き、味噌汁、果物、飲み物などです。
炭水化物をエネルギーに変えるには、ビタミンB群が必要です。スーパーでは、ビタミンB群を添加した米や麦が販売されています。これらの食品を利用しましょう。ビタミンB群は、豚肉に多く含まれています。豚肉のソテー、ハムエッグなどを組み合わせてもよいでしょう。
控えたいのは、試合前日の食事と同じようにあぶらの多い食品、料理です。揚げ物やベーコン、ひき肉、マヨネーズサラダ、クロワッサン、デニッシュペストリーなどを控えましょう。また、さつま芋や大根、ゴボウなどの根菜類は、食物繊維が豊富です。試合前に食物繊維を取り過ぎるとお腹の中にガスが溜まりやすくなり、動きづらく感じることがあります。これらの食品も控えましょう。
選手によっては、試合当日は緊張することがあります。緊張すると食欲が落ちたり、胃腸の動きが低下したりすることがあります。この場合、無理して食事だけでエネルギー補給を完結せずに、補食を利用します。
試合当日の補食について
(表1)は、試合までの食事・補食例を示しました。こちらの表で誤解しないで欲しいのですが、試合4時間前に食事をとり、試合2時間前に補食をとり、さらに1時間前に補食をとるという意味ではありません。食事を済ませたあと、試合までエネルギー切れを感じなければ、そのまま試合を行って結構です。
しかし、食事をしっかりとることができなかった、食事をとったけれどエネルギー切れを感じた時、試合までどのくらい時間が空いているかによって選べる食品が変わることを示した表です。お気づきの通り、試合時間に近くなるほど、消化の早い食品になります。
ただし、(表1)は、あくまでも目安です。消化吸収には個人差があります。実際、試合1時間前におにぎりやお弁当を食べても平気な選手はいますし、試合2時間前でもバナナを食べづらくすする選手はいます。試合ぶっつけ本番で食事や補食をとるのではなく、この表を参考にし、紅白戦、練習試合などでいろいろな方法を試し、体感してください。そして、自分に合ったエネルギー補給方法を複数見つけてください。
(写真)は、高校の春季大会時に選手が持参したお弁当、補食です。
お弁当の半分以上は、ごはんになっていますね。ごはんを食べやすいようにふりかけ、梅干しが入っています。焼肉の脂が多いようにみえます。選手に話を聞くと「このぐらいなら、試合中に気持ち悪くならないので、大丈夫です」と話しましたので、私は控えるようにと注意しませんでした。選手の試合時の動きに影響がない範囲で、エネルギー補給しやすく、食べやすいものを選手と一緒に考え、アドバイスするようにしています。