カラスが不吉と言われる理由、全部「人間の都合」だった【眠れなくなるほど面白い 図解 カラスの話】

不吉っていうけど根拠あります?

ありません(きっぱり)。

確かにカラスは動物の死骸を食べます。昔は病気や飢えで亡くなった人の遺体がきちんと埋葬されずに放り出されていたことや、戦乱で死屍累々ということもあったでしょう。そういうところにカラスがきて食べていれば、それは不吉に見えるのも仕方ありません。

ですが、死骸があるからくるのであって、カラスがくるから人が死ぬわけではありません。

葬式にしても、人の出入りが増え、料理の支度をしていれば、カラスは様子を見にくるでしょう。これも「カラスがくるから」ではなく「葬式をしているからくる」です。

カラスが鳴いたら人が死ぬなんて言いますが、考えてみればカラスは毎日鳴いています。そりゃ誰かが亡くなった日も鳴くでしょうが、そうでなくたってどうせ鳴いたでしょう。はっきり言えば、なにも関係ないのです。

とはいえ、カラスは不吉という考えは世界中にあります。私が聞いた範囲でも、中国人もフィリピン人もそう言っていました。欧米でもどちらかというと悪魔や魔女の使いで、あまりいい立場ではありません。

このあたりは文化的、宗教的な問題でもあるので頭ごなしに全否定はしませんが、現代人としては、「科学的には一切関係ない」という視点も、持っていてもいいでしょう。

カラスは聖なる使者?悪の化身?

アニミズム、つまり森羅万象に精霊が宿るというタイプの宗教では、カラスも神様扱いのことがあります。ちょっと変わったものとしては、ヒマラヤ地方の例があります。この地域では鳥葬(死者を鳥に食べさせて葬る)を行いますが、食べにくるのはハゲワシやカラスです。

こういった鳥は魂を肉体から解き放ち、天上に連れて行く存在なので、尊いものと見なされました。かつてチベットでは遠くを飛ぶカラスにさえ、手を合わせて拝んだといいます。

インド南部では、死者は1週間たつと白黒のカラスになって現世に戻ってくるという言い伝えがあり、お供えして歓迎します。ただし、黒いカラスがきた場合は悪魔の化身なので追い払うとか。ちなみにこの白黒のカラスはイエガラスと思われます。

インドの都市にはイエガラスがやたらにいることがあるそうですが、こういった伝説も影響しているかもしれません。もっとも、そうでなくても東南アジアの都市にはイエガラスがよくいますから、伝説のせいなのか、もともとカラスがいたからなのかはよくわかりません。

カラスQ&A

アイヌ地方での不名誉な呼び名とは?

「〇〇食いガラス」と呼ばれていたよ
アイヌの伝説ではハシブトガラスはクマの居場所を猟師に教えてくれると言いますが、同時に「クソ食いガラス」というありがたくない名前もあります。役に立つこともあるけど身近にい過ぎるせいか、あまり神聖なものではなかったようです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 カラスの話』著:松原 始

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 カラスの話』
著:松原 始


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