『伝授』第25回 競走馬のデビュー時期や出走回数について伝授

 今週からクラシックが始まり、競馬がより盛り上がってくる時季となった。デビューから2戦しただけで大舞台に駒を進めてくる馬もいれば、すでに10戦近く使っている場合もある。
 今回はそれぞれの馬のデビューがどのように決まるのか? 出走回数の多い馬と少ない馬の置かれた状況の違いなどについて書いていこうと思う。

厩舎はなるべく早くデビューさせたいもの

 調教師はクラシックから逆算して、どこで使い始めるのが良いかを考える。昔は10月くらいが一番ちょうど良かった。でも今は6月のうちから仕上がっている馬はデビューさせて、どんどん早めに賞金を稼がせるのがクラシックロードに乗るための最善策となっている。
 ソエが痛いとか深管が痛いとかいう馬は、すぐに使えないからデビューが遅くなるけど、そうでなければ早いうちから使いたいもの。

 1月や2月生まれといった誕生日の早い馬は、仔馬のうちは遅い生まれの馬と比べて成長度合いでアドバンテージがあるケースが多い。ただ、正直なところデビューする前に成長しきっている馬もいる。
 俺の持論だが、ディープインパクトはデビュー前から相当能力が高く身体も仕上がっていて、デビューした後は特に成長していない。新馬のままのポテンシャルで引退まで走っていたと思っている。

ディープインパクトはデビュー前に完成されていた!?

デビュー間もないうちから数を使う馬、使わない馬の違いとは?

 昭和の時代は目先の賞金欲しさにダービーまで10戦するなんてのは当たり前だった。皐月賞とダービーの間に相手の弱そうなレースがあれば1戦挟んだりしたからな。ダービートライアルだったころのNHK杯とかな。
 今は能力がある馬はそういう使い方をせず、レースを選んで出走して本番に備える。

 一方で能力の限界が見えている馬は、数を使ってカイバ代を稼いでもらうことになる。馬主が馬に何を求めるかにもよる。
 たくさん使うことで「使い減り」といって、心身がすり減ってしまいカリカリする馬がいるのも事実だ。あまり使いすぎると、ポテンシャルの100%を出せる場面がなく競走馬としてのキャリアを終えることになってしまう。

総じて馬の出走回数は減った

 古馬に関しても昔はもっと数を使えていたけど、出馬投票のルールに伴う入厩馬の入れ替えなどでガシガシ使うことはできなくなってしまった。
 もっと出走させたいと思っても、レースの10日前に入厩していないとダメとか縛りが多いし、クラブオーナーの馬が多いと調教師の意思で自由に使えない現実もある。
 成績が上がっていない厩舎はクラブ馬を預かれない。そうすると馬の数が少なくて入れ替えがないので預かっている馬の使い倒しができるから、数を使いたい個人馬主にはありがたい。ただ、そういう厩舎はなかなか使っても勝てていないわけで、馬主にとっては良し悪しだけどね。

・矢作調教師のすごさを伝授

 矢作調教師は昨年、JRA全国リーディング4位の実績で、他の厩舎の倍くらい使っている。たとえば、3位の中内田厩舎が出走回数242回だったのに比べて、矢作厩舎は515回だ。
 クラブの馬は自分の意思でなかなか使うところを決められないけど、それ以外の馬で数を使って結果を出しているのは調教師の技術。

矢作芳人調教師

 矢作調教師は若い頃、オーストラリアで修行していたことがあった。向こうは日本と違ってレース間隔が6、7日で出走するのが当たり前。
 一方、日本では競馬を使った後に2~3週は空けるのが普通。競馬とはそういうものだという感覚で、下手な日本特有の固定観念がある。
 その点、矢作調教師は馬の状態を見て、大丈夫だと思えばバンバン使う。それで結果の出ない馬は、外厩などにいる馬と入れ替える。外に信頼できる良いスタッフがいる牧場があって、態勢が整っている馬をすぐ入れることで次の週には使える。競馬を使ってスムーズに次の馬と入れ替えて、上手く回るようにするということが調教師の仕事として一番大事。
 だから馬が休養先から帰ってくると、厩舎にいる1~2ヵ月の間に連闘や中1週のローテーションであちこち行って3~4回は使っている。これは主に条件馬のことだけど、たまに重賞クラスの馬でもやるもんな。2018年の安田記念を勝ったモズアスコットも連闘だったろ?

モズアスコットは安土城S(OP)からの連闘策で2018年の安田記念を制覇

 また、フォーエバーヤングのように能力が突き抜けている馬の扱いにも優れている。仮に矢作調教師じゃないところに預けられていたら、国内だけで走っていた可能性もある。そうなりゃ日本で20連勝ぐらいして、それはそれで注目は浴びただろうけどな。
 馬の能力を早いうちに見極めて、ベストなタイミングで海外に連れて行ったというのは矢作調教師のすごさだよ。

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