飛行機は“油の力”で飛んでいる!? 油圧装置が操縦の要な理由とは【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】


飛行で動かすパワーとなるものは
大きな舵面を動かす力の源「油圧装置」
大型ジェット旅客機は、舵面が大きく、高速で飛行するため、小型機のようにパイロットの操縦力だけで直接舵面を動かすことはできません。
トラックやバスがパワーステアリングなしでタイヤを動かすことができないのと同じです。
飛行の場合に動かすパワーとなるのは、液体が圧縮されない性質を利用して、小さな装置で大きな力を発揮する油圧装置と呼ばれているものです。
圧縮されない性質を利用するなら、油でなく水でもよいと思いがちですが、水は物を錆びつかせる性質があり、外気温度の低い上空では凍ってしまう欠点があるのです。
また油は水に比べて凍りにくいだけではなく軽く、何よりも潤滑 油の役目としても働きますのでとても便利です。油圧装置は、エンジンで駆動ポンプで加圧して、 筋肉に血管のように張り巡らしたパイプであるアクチュエーター(駆動装置)を動かしています。加圧の力は、人間の血圧の約1200倍、1平方センチメートル当たり約210kgです。エアバスA380やボーイング787などは、350kg以上の圧力があります。
左図のように、操縦桿を右に回すと、ケーブルを介して中央制御アクチュエーター(CCA)に操縦桿を回した量が伝達されます。CCAは操縦桿の動きの量に応じて動き、さらにケーブルを介してエルロンを駆動するアクチュエーターに伝達されます。そして、操縦桿の動きに応じたエルロン作動させます。
なお、操縦桿の動きを電気信号に変え、 アクチュエーターを電気信号で作動させる方式をFBW(フライ・バイ・ワイヤ)と呼び、現在の飛行機の主流となっています。
何の力で動かしているのか

操縦桿を右に回すと左側エルロンのアクチュエーターに油圧装置から作動液が流れ込みアクチュエーターが作動してエルロンを下げます。右側エルロンのアクチュエーターは逆方向から作動液が入りエルロンを上げる方向に作動します。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』著:中村 寛治
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』
著:中村 寛治
「飛行機はなぜ、どうやって空を飛べるのか」という基本から、最新の知識、身近な航空雑学まで、飛行機の魅力をたっぷり図解でわかりやすく教える一冊。
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