「ドドドドッ」は危険信号?“バフェット現象”で飛行機が揺れる理由とは【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】

臨海マッハ数とバフェット

衝撃波の発生で起こる失速に対応するには?

「音の壁」の手前となるマッハ1前後は、機体の中で、音速を超える場所と超えていない場所が混在してしまい、面倒な速度領域となっています。

例えば、図の例であれば、飛行速度がマッハ0.86であっても、翼の上面を流れる空気の速度は音速になっています。このように飛行速度がマッハ1でなくても、翼上面が音速を超えてしまう飛行速度を臨界マッハ数と呼んでいます。

そして臨界マッハ数を超えるマッハ数、例えばマッハ0.88になると、音速を超えた後に再び音速になるような場所ができます。そこに衝撃波が発生するのです。

衝撃波が発生すると、抗力が急に増えるだけではなく、翼から剥離(はくり)してしまった空気が尾翼や機体をたたくことで、「ド、ド、ド、ドッ」と音を立てて、機体全体が振動するバフェット(日本語訳はなく、意味は「荒波にもまれる」)と呼ばれる現象が起こります。

このまま放置していると、機体の振動が激しくなるだけではなく、翼から空気の剥離も激しくなって翼が発生する揚力だけでは飛行機の重さを支えきれなくなります。この現象が、いわゆる失速という状態です。この失速のことを、衝撃波失速(ショック・ストール)と呼んでいますが、揚力を得ようと迎え角を増すと、さらに翼から空気の剥離が起き、さらに深い失速に陥ることもあります。バフェットが発生した場合には、飛行高度を下げることが一番の得策です。

以上のことは、高度に関係なく同じマッハ数で起こりますので、指示対気速度と同じように臨界マッハ数は、パイロットにとってはなくてはならない計器となっています。

バフェットが発生するのは?

М=1のときを音速(Sonic)、M<1の領域を亜音速(Subsonic)、M>1を超音速(Supersonic)、M>5以上になると極超音速(Hypersonic)と呼んでいます。とくに面倒な速度領域であるM=0.8~1.2を遷音速(Transonic)と呼んでいます。

臨界マッハ数

飛行機の一部がマッハ1.0を超えるような飛行マッハ数

飛行速度が臨界マッハ数を超えるとM>1となる場所ができ衝撃波が発生します。主翼に衝撃波が発生すると、主翼を流れる空気が剥離します。その剥離した大きなエネルギーを持つ空気が機体後部を振動させるバフェットと呼ばれる現象が発生します。このバフェットは衝撃波失速の前触れなので、臨界マッハ数以上では絶対に飛行しません

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』著:中村 寛治

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』
著:中村 寛治

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