欧米と東洋では、自己観に違いがある
アイヒマン実験では、普通の善良な人でも権威によって命令されると、残忍な行為を実行してしまうことが判明しました。こうした「服従」はなぜ起こったのでしょうか?
その理由のひとつに、「代理状態への移行」が考えられます。これは、自分自身を他人の要望を遂行する代理人とみなすようになる状態のことです。実験に参加した人たちは、研究者の命令に従ううちに「電気ショックを与えているのはあくまで研究者であって、自分はただその指示に従って、ボタンを押しているに過ぎない」と考えるようになります。
そして、こうした代理状態へ移行すると、自分自身には責任がないと感じられるようになり、たとえ他人を傷つける行為を実行しても罪の意識がなくなります。
大量虐殺などの重大な犯罪が行われたとき、私たちは「人としてなんらかの重大な欠陥があり、自分たちとは違うからこそ、このような非人間的なことができたのだ」と考えてしまいがちです。しかし、まともな理性を持った人物であっても、環境によっては同じことをしてしまう可能性があります。アイヒマン実験はそのことを私たちに突き付けているのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』 監修:亀田達也
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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?
日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。
この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。
明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう
この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした
ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。
会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。
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【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』
監修:亀田達也
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公開日:2022.11.24