ポジティブ思考のつくり方
性格は先天的なものと後天的なもので形成されていますが、不安障害に大きくかかわる「自己志向」を高めるためには、どうすればよいのでしょうか。
「自己志向」を高めるコツ
個々人の性格についての分析で、精神医学の研究によく用いられるのがアメリカの精神科医クロニンジャーの7因子モデルです。それによれば、私たちの性格は、遺伝的な影響が強く、先天的に人が持っている4つの因子と、経験や環境によって後天的に獲得する3つの因子が相互に絡み合って形成されます。このモデルは双子の研究などをとおして提唱されたもので、専門家の間でも妥当なものだと受け取られています。遺伝的影響の強い4因子は、脳内の神経伝達物質とその受容体の数などが関係しています。例えばアドレナリンやドーパミンといった興奮にかかわる神経伝達物質の受容体が多い人がいれば、その逆にギャバなどの興奮抑制の物質に反応しやすい人もいて、アクセルかブレーキか、人によってどちらが優位かは異なるのです。
親の愛情が強い性格を育てる
4因子による反応だけでは社会生活に支障が生じます。これをカバーするのが後天的に獲得する3因子で、なかでも不安障害に大きくかかわるのが「自己志向」だといわれます。これは自分への信頼感、自尊感情といったパーソナリティです。4因子のうち「損害回避」の傾向が強い人は不安になりやすいのですが、「自己志向」が高ければ「慎重、堅実、几帳面」といった美徳としてその性格をあらわすことができます。
自己志向は、特に幼少期に、親の愛情によって育まれていくものだと考えられています。親によって愛されている自分には価値があるという「自己受容」の感覚は、大人になった後も、失敗やストレスに強い前向きな性格となって続くのです。
とはいえ、さまざまな経験の中で、例えば他人から否定的な評価を受けたときなど、自分はダメだといったネガティブな思考にとらわれることは誰にでもあると思います。そこで、自己志向を高く維持するために、次の4つのことをおすすめします。
「自己志向」を高める4つの方法
- 自分のよいところを見つけて書き出す
- 「ありがとう」といわれる小さなことを実践する
- ほめられたことを素直に受け止めて喜ぶ
- 過去に成功した実績などを振り返る
これらはいずれも、自分に対するポジティブな評価や行動です。他人の評価にすべてを委ねていては、自己志向を弱めるばかりです。
日々の終わりに、このようなメンテナンスを心がけ、心の中の不安を追い出していきましょう。
CHECK!
- 人の性格は先天的な要因が大きい4つの因子と後天的な要因が大きい3つの因子からなる
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修
【書誌情報】
『心の不調がみるみるよくなる本』
ゆうきゆう:監修
現代増加の一途をたどる「不安障害」。
不安障害とは払拭できないほどの不安や恐怖の感情が過剰に付きまとい、日常生活に支障をきたすような状態になることです。
一概に不安障害といってもさまざまな症状があり、突然理由もなく激しい不安に襲われて発作などを引き起こす「パニック障害」や、謎の強迫観念にとらわれて意味のない行為を繰り返す「強迫性障害」、若者に多く人前にでると異常に緊張して体調を崩す「社交不安障害」などタイプは異なります。
本書ではそのような不安から引き起こされる心の不調について、症状例をそえて専門医がわかりやすく解説。自分の「不安障害度」を簡単にチェックできる診断テストも掲載。病気を自覚し、その症状にあわせた治療を受けられるようサポートする一冊です。
公開日:2024.12.16
