1978年に放映されたテレビドラマ『白い巨塔』をはじめ、これまで数多くの作品に出演してきた俳優の山本學さん。近年では2019年のドラマ『下町ロケット』や2021年公開の映画『騙し絵の牙』といった話題作に出演するなど、88歳となった今も第一線で活躍を続けています。
そんな山本さんは3年前の2022年、認知症予備軍とも言われる軽度認知障害(MCI)と診断されました。しかし現在、山本さんの症状はミニメンタルステート検査や長谷川式認知症スケールといった代表的な2種類の認知機能テストの結果を見ても、大きく改善したと言います。
MCIと診断されてからの3年間、山本さんが継続しているのが、『認知機能改善 30秒スクワット』(本山輝幸・著/日本文芸社・刊)でも紹介されている本山式感覚神経トレーニング(本山式筋トレ)です。
今回、『ラブすぽ』では山本さんと著者の本山先生にお話を伺い、MCIと診断されてから現在に至るまでのご自身の経験や、同じくMCI、認知症に悩む多くの人たちへメッセージを頂きました。
決定打となったのは「幻視」
本山式筋トレを選んだ理由とは?
――山本さんは病院でMCIと診断を受ける前、ご自身でなにか異変に気付かれたのでしょうか。
山本:年齢を重ねるごとに、物忘れが増えたり、脳の機能が低下している自覚はありました。文章を書くとき以前はそこまで時間がかからなかった作業に、ものすごく時間がかかるようになったりね。書いていて、頭の中で文章をまとめることができなくなってきたんです。そして、自分の中で「これはおかしい」という決定打になったのが幻視です。
――どういったものが視えるのでしょう。
山本:私の場合は、「図形」でした。家の壁に、そこにあるはずのない図形が視える。おかしいなと思って触ろうとしたら、やっぱりない。夢を見ているんじゃないかと、自分の頬をつねったりもしましたが、どうやら夢じゃないらしい。あとで聞いたのですが、「幻視」といっても視えるものは人それぞれで、私のように図形が視えるケースはあまり多くないそうです。病院ではMRIや脳の血流検査を受けたんですけど、そこでMCIだと診断されました。
――診断を受けたあと、症状改善のためにどんな指導がされたのでしょう?
山本:いろいろありましたよ。いわゆる脳トレみたいなものから、本山先生の運動療法まで、たくさんの改善方法を説明してもらって、その中から本山先生のトレーニングを選んだんです。
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時折笑いも交えながら、にこやかに語ってくれた山本學氏
――運動療法を選んだ決め手は?
山本:他の方法は、別にクリニックに通わなくても自宅でできるなと。でも、本山先生のトレーニングは最初に見た時点でかなりキツいとわかったので、せっかく通うのであればやってみようと。
本山:學さんがおっしゃる通り、私のトレーニングはかなり負荷の強いモノです。ただそのぶん、感覚神経をしっかりと刺激して、認知機能の向上が期待できる。學さんは本当に真面目で、週に何回もトレーニングに通ってくれました。
――本山式筋トレは感覚神経に刺激を与えて脳を活性化するというものですが、山本さんは説明を受けた時点ではどう思われたのでしょう。
山本:理にかなっているなと思いました。私自身、これまでの俳優生活で医者役をすることも多かったので、普通の方々よりは医学的知識はあったと思います。そのうえで、MCIと診断を受けてからはさらに勉強もしました。そうやって調べれば調べるほど、先生のトレーニングが根拠に基づいたものだと理解できたんです。
本山:學さんのこの姿勢は実はすごく大切で、トレーニングが厳しいぶん、「一体、なぜこれをやらなければいけないのか」をちゃんと理解しないと、続けるのはむずかしい。一度や二度のトレーニングで改善されるものではないので、継続が大切です。そのためには、言われたことをやるだけでなく、その理由をしっかりと理解して、そのうえでトレーニングを行うことが大切になってきます。
――しっかりと継続したおかげで、認知機能テストの結果も大きく改善された。
山本:でも、今でも物忘れはあるし、言葉が出てこないことだってありますよ。私は「完全に治る」とは思っていません。だから、私がやるのは症状の進行を少しでも緩やかにするための努力なんです。
本山:學さんは、ちょっと自分に厳しすぎます……(苦笑)。認知機能テストでもはっきりと改善傾向が見られて、数値上はすでに正常です。だから私は「學さんはもう治ってますよ」と言ってるんですけどね。だって、これだけ明朗快活にお話ができる88歳、なかなかいないですよ。
――山本さんご自身も、トレーニングを続ける中で「これは効果がある」という実感もあったからこそ、継続されてきたんですよね?
山本:もちろんです。今回この取材を受けたのも、本山先生のトレーニングについてだからです。指導を受けながら、「この人は信頼できる人だ」と感じましたし、だからこそそれを広めるお手伝いを少しでもしたい。
本山:そう言っていただけると、本当にありがたいですね。でも、一番は學さんの努力があってこそです。私はそのための方法論をお伝えしたり、アドバイスを送っているだけなので。
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写真右手が「認知機能改善30秒スクワット」の著者:本山輝幸氏
インタビュー後半ではMCIを改善させた山本學氏からの認知症に対するアドバイスなどについてお伝えします。
ぜひご期待ください。
【書誌情報】
『認知機能改善30秒スクワット』
著:本山輝幸
「約束の日時を間違える」「今言ったばかりなのに覚えていない」――。
そんな認知症の初期段階や軽度認知障害(MCI)なら健常者レベルまで脳機能は戻せる!
認知症予防・改善専門の運動療法士が教える、奇跡の30秒スクワット!
「日時がわからなくなる」「食べたものが思い出せない」「今言ったばかりのことを覚えていない…」――。
認知機能の低下に気づくきっかけはさまざまですが、「なんだか最近記憶力が悪いかも…」と自分で自覚している人はもちろん、高齢の家族と接していると、「前より少しおかしい……」と違和感を感じる人もいるのではないでしょうか。
それはもしかしたら認知症の初期段階、もしくは“認知症グレーゾーン”と呼ばれる『軽度認知障害(MCI)』という認知症の前段階かもしれません。
軽度認知障害は何もしなければそのまま“4年以内には50%、6年以内には80%が認知症になってしまう”と言われる状態ですが、その段階、もしくは認知症になっても初期段階であれば認知機能を健常者レベルまで戻せる方法があります。
それが、認知症改善専門の運動療法士である著者が教える、『認知機能改善30秒スクワット』です。
著者の20年以上の研究により、“体の感覚神経と脳機能には相関関係がある”ということが明らかになってきました。
感覚神経とは、痛い、熱い、寒い、などを体が知覚する神経のこと。
徘徊する中度以上の認知症患者は痛みをあまり感じないため、どこまでも歩いて行ってしまいますが、そのように『感覚神経』が鈍くなってしまっている人ほど認知機能が衰えてしまっているのです。
ただし、運動と言ってもウォーキングやジョギングなどの有酸素運動ではなく、『本山式感覚神経トレーニング』という筋力トレーニングです。
トレーニングと聞くとつらそうなイメージもありますが、30秒だけでもしっかり感覚神経に刺激が入り、認知機能の改善に繋がるように開発されたのがこのスクワットです。
太もも、おしり、ふくらはぎなど、重要な下半身の感覚神経を1つの運動で鍛えられ、時短なのに効果絶大な運動法により、認知機能の改善が期待できます。
日常生活に支障は出ていないものの、もの忘れや、今言ったことをすぐ忘れてしまうような症状がある人、その家族にはぜひ手に取って頂きたい一冊です。
公開日:2025.03.01
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