宮田諭(TUBC)と五十嵐圭(新潟アルビレックスBB)スペシャル対談③
2024‐25シーズンも、大きな盛り上がりを見せている国内プロバスケットボールリーグ=Bリーグ。2月21、22日に行われたB3第22節、東京ユナイテッドバスケットボールクラブ(TUBC)対新潟アルビレックスBBの2連戦では、バスケファン注目の対決が実現した。TUBCに所属する宮田諭選手、新潟に所属する五十嵐圭選手――。ともに40歳を超えながら、いまなお現役を続ける“日本バスケ界のレジェンド”。この試合、宮田選手はベンチを外れたが、五十嵐選手は2戦連続でスターターとして出場し、21日のGAME1ではチーム3位となる9得点を挙げるなど、存在感を発揮。『ラブすぽ』では今回、試合直後にレジェンド2選手の対談を実施!ふたりの関係性からバスケ界の未来まで、存分に語って頂きました!
全3回の第3回】
――ここからはおふたりに「日本バスケ界の未来」について話を伺います。2026‐27シーズンからは新リーグが開幕し、Bリーグも次のフェーズへと移行していきます。
五十嵐 僕自身は昨シーズンまでB1(群馬クレインサンダーズ)でプレーしていて、今シーズンから古巣の新潟に戻り、はじめてのB3でプレーしています。そういう意味では新たな挑戦だし、Bリーグが開幕したときと同じように「新潟をなんとかしよう」という気持ちでプレーしています。プレイヤーとして、コートの上でチームを引っ張りたいという気持ちはもちろんあるし、新潟をもといた場所に再び引き上げることを目指しています。もちろん、新リーグが開幕することで色々な変化も生まれるでしょうけど、そこだけはぶらさずにやっていきたいですね。
――Bプレミアの開幕は日本バスケ界が「さらに上」を目指すひとつの決意表明のようなものだと思うのですが、ここからもう1ランク上がるために必要なモノとはなんでしょう。
宮田 僕は選手だけでなくGMとしての目線もあるので、リーグだけでなくクラブ単位でどれだけ発展できるかが大きな課題だと思っています。たとえば新リーグ移行に伴うレギュレーションの違い。どこまで日本人選手を大事にして、リーグとしてアジアの中でどういう位置づけ、どのレベルを目指すのか。おそらく、今後リーグのレベルが上がっていくと、Bリーグというカテゴリの中でプロ選手として生きていける日本人は減っていくと思うんです。プロスポーツという世界なのでそれは仕方がない部分でもある反面、これまで応援してくれた多くのファンがいるという事実もある。そこは危惧している部分でもあるので、ここからリーグがどう変化していくのか注目して見ていますし、クラブとして意見を求められれば、しっかりと伝えないといけないなとも思っています。
――Bプレミアでは「オンザコートフリー(※登録された外国籍選手が制限なく試合に出場できる)」が導入され、日本人選手の出場機会が減る可能性も指摘されていますよね。
五十嵐 日本人選手にとっては間違いなく「挑戦」ですよね。Bリーグ開幕後もオンザコートルールは改変されていて、現在のリーグを見ても外国籍選手からポジションを奪わなければ試合に出られない状況になっています。ただ、そこを勝ち抜けば間違いなく「世界」には近づける。厳しいレギュレーションではあると思うんですけど、「トップリーグ」というのはもともと狭き門でもあったはず。僕や宮田さんの世代で言えば、当時は企業クラブが8つくらいしかなくて、毎年、大学バスケ界からそこに入れるのが1人とか2人とか……そういう時代もあったんです。「選ばれた選手しか行けない」のがプロの世界であるべきだとも思うし、僕自身も結果が出ずにクビを告げられた経験もあります。シビアな世界ですけど、これからの若い選手にはそこに正面から「挑戦」してもらいたいなという気持ちもあります。僕自身も今は現役としてプレーしていますけど、引退する時期が来たら違う立場で日本バスケに携わっていきたいと思っています。
――ありがとうございます。最後に、おふたりが現在プレーしている「B3」というカテゴリが日本バスケ界の中でどんな役割を担っているのか、どんな立ち位置なのかをファンのみなさんに伝えてほしいのですが。
五十嵐 Bリーグの中でも「B1、B2」と「B3」って、ちょっと違いますよね。たとえば昨シーズン、僕と(田臥)勇太が「Bリーグ最年長選手」と言われたんですけど、「いや、宮田さんがいるじゃん」って(笑)。そういう部分も含めて「なんでなんだろう」っていう率直な疑問はあるんです。新潟に関しては、日本初のプロバスケットボールクラブとして設立されて、地域にバスケが「文化」として根付いているんですけど、他のクラブを見ると、そこで苦しんでいるところもあるよな……と思ったり。地域の体育館で公式戦を戦うようなことも僕自身初めての経験で「なかなかだな……」と思ったのも事実です。そういう意味ではさらに成長、改善していく余地はあると思うんですけど、新リーグに移行するタイミングでB3が「Bネクスト」になって、これまで以上に3つのカテゴリが一体化するとも聞いています。B1、B2、B3ひっくるめてのBリーグだと思うので、みなさんにも応援してほしいですね。
宮田 B3のレベルで言うと、ここ数年でようやく、選手の入れ替えがあってもある程度のレベルが保てるようになってきた感覚があります。TUBCで言えば今シーズン、(B1の)千葉ジェッツから(トビン)マーカス(海舟)が来てくれたのもそうですし、認知も、人気もある程度のレベルまで来た。逆に数年前までは完全にデベロップメント・リーグ(選手育成を目的とするリーグ)だったので良い選手がいたら経験を積ませて、上のリーグに送り込むという流れがあった。もちろん、圭が言うようにまだまだクラブとして安定していないところもあるので、そこ(育成リーグ的な立ち位置)を完全に抜け切れてはいないんですけど、新リーグ移行でようやく上のカテゴリとも完全に一体化できるということで、どういう変化が生まれるかも注目しています。
一方で、僕らも含めてすべてのクラブが「B3を抜けたい」と思って戦っているので、その辺は正直、むずかしいところなんですけどね(笑)。ただ、応援してくれる人がいる限りは、カテゴリに関わらず、選手も、もちろんクラブも精いっぱい戦うので、みなさんには少しでも試合会場に足を運んでいただきたいです。
――貴重なお話、ありがとうございました!
写真・TUBC提供
文・花田 雪
公開日:2025.03.07
