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投手が試合で思うようなピッチングをできていない場合の対処法とは!?【革新的投球パフォーマンス】

Text:高島誠

スクリーニングをかけて問題点を探る

練習やトレーニングを重ねる目的は、誰しも選手として少しでも向上するためだと思います。日々の努力を効果的なパフォーマンスアップにつなげるためには、自身の課題を把握することが重要です。

投手が試合で思うようなピッチングをできていない場合、何らかの原因が絶対にあります。大切なのはその理由を突き止め、改善していくこと。やみくもに投げ込みをしても、努力した気分になるかもしれませんが、問題解決にはつながりにくい。逆に変なクセがついて悪化する可能性もありますし、最悪の場合はケガに至ります。

例えば、「ボールを前で離す」ことに課題があるとします。これはピッチャーに対してよくされる指摘で、確かに大切です。
ではそもそも、ボールを前で離すことはなぜ大切なのでしょうか。単純にリリースポイントがホームベース側に近づけば近づくほど、相手打者にとって対応する時間が少なくなるという理由が一つあります。対して投手目線で言うと、前でリリースした方が力のある球を投げられるからです。

リリース時に上半身が前に行けるためには、股関節の柔軟性が必要です。股関節が硬かったり、お腹が回るスペースがなかったり、胸郭が回らなかったりすると、そもそも前に行けません。身体が硬くて前に行けない投手が「前で離せ」と指示されると、肘だけを前で離そうとする場合があります(肘を抜くような投げ方になります)。そうすると肘に負担がかかり、ケガをしやすい投げ方になってしまいます。

また、股関節やお腹、胸郭をうまく使えないと、力がある球を投げられません。投手にとって「前で離す」ことは重要ですが、どうすれば前で離せるようになるか、その方法を突き止めていく必要があります。

股関節やお腹、胸郭が硬い投手は、2章で紹介したトレーニングに取り組んでください。毎日少しずつ努力を重ねて柔軟性が増せば、前で離せるようになるはずです。

一方、身体の硬さではなく、「目線」に問題がある場合もあります。子どもの頃、「キャッチャーをしっかり見て投げなさい」と言われたことのある読者もいるのではないでしょうか。実際、キャッチャーミットをずっと見たまま投げる子が多くいます。
投球動作でトップからリリースに移行する時、キャッチャー方向に首を曲げすぎると、並進運動をする際に前の肩が早く開いてしまいます。それでは骨盤やお腹、胸郭をうまく使えず、肩肘に負担のかかる投げ方になります。身体の連動性がなくなり、質の高い球が行きません。

人間の首が向く角度は度から度と言われていて、肩が固定されたまま首だけをそれ以上の角度でやや強めに回すと、痛みを感じると思います。そうした動きをすると斜角筋(首の前面についている筋肉)が緊張するため利き腕の肘が上がりにくく、投球動作をしにくいばかりか、胸郭出口症候群になりやすくなります。胸郭出口症候群は手を挙げる際に肩や肘、肩甲骨の周辺に痛みが生じたり、手に痺れを感じて握力低下につながったりする症状です(予防法は5章で紹介します)。キャッチャーを見ようと意識するあまり、投球動作中にこうした体勢になるのは単純に投げ方としてよくないですし、いい球がいきません。

スポーツにおいて目が果たす役割は大きく、特に「奥行き」を捉えることが大事です。例えば弓道の射法では、的に正対しません。投手のセットポジションのように、横向きで構えます。両目をそろえて見ると、奥行きがわかりにくいからだと思います。ボクシングでも、リングで相手と対峙する際は半身です。正対すると、距離感がつかみにくくなるからです。

投手にも同じことが言えます。キャッチャーに正対して投げると、奥行きをつかめず、コントロールの悪化につながる可能性があります。

「ボールを前で離す」という課題は、目線の使い方で改善できる場合もあれば、股関節の硬さから招いているケースもあります。あるいは、原因が複合的なこともあるでしょう。

大事なのは、まずは課題の原因を見極めていくことです。そのために4章ではピッチングの「チェックポイント」を紹介しています。スクリーニングをかけ、自分の問題はどこにありそうかを探し出してください。課題に応じて、やるべきトレーニングの内容も変わってきます。

人の時間は有限です。限られた時間を大切に使うためにも、努力が成果につながるようにアプローチしていきましょう。


出典:『革新的投球パフォーマンス』高島誠

『革新的投球パフォーマンス』
著者:高島誠

「高校生なら誰でも140km/hを投げられるようになる」という命題に明確な回答をする超実践本!近年成長著しい広島県私立武田高校で強化メニューを担当するトレーナーの高島誠の下には、山岡泰輔投手や高橋礼投手というプロの投手たちもシーズンオフにトレーニングにやって来ます。高島はどんな指導をして成長に導いているのか。その考え方や練習&トレーニング方法を写真とQRコードで詳しく解説!

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