【コラム】トランプW杯劇場 自己顕示欲の暴走【二宮清純 スポーツの嵐】

政治・宗教的中立は何処…?

 この御仁の自己顕示欲は尽きることがないようだ。

 ドナルド・トランプ米国大統領の私邸マール・ア・ラーゴに近いパームビーチ国際空港が、「ドナルド・J・トランプ国際空港」に改称したのは、この7月のこと。州議会の共和党議員の提案がきっかけだったとはいえ、その厚顔無恥ぶりには恐れ入る。

 また昨年12月には、首都ワシントンDCにある「ジョン・F・ケネディ舞台芸術センター」が、理事長を務めるトランプ氏の意向を受け、「トランプ・ケネディ・センター」への改称を決定した(連邦地裁が手続きの違法性を認め、トランプ氏の名前を削除するよう指示。トランプ政権は不服として連邦高裁へ上訴)。

 もっと驚くのは、サウスダコタ州ブラックヒルズにあるラシュモア山への執着だ。岩肌にはジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、エイブラハム・リンカーンという4人の偉大な大統領の顔が刻まれている。トランプ氏は、この列に自らも加わりたいというのだ。臆面がないにも程がある。

 スペインの16年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた北中米W杯。ニューヨーク・ニュージャージー・スタジアムで行なわれた表彰式でも、トランプ氏の非常識な行動が物議をかもした。

 FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長とともにピッチに姿を現すと、会場はブーイングの嵐。スペインの主将ロドリに優勝トロフィーを渡すまでが“公務”だったはずだが、そのまま居座り続け、ロドリに退席を促される始末。インファンティーノ会長に腕を引かれ、しぶしぶ端に寄った。

 トランプ氏には“前科”がある。昨年夏に全米で行なわれたクラブW杯でも、自らが主役だと言わんばかりの行動を取り、サッカーファンから顰蹙を買った。

 優勝セレモニーのハイライトは、主将を中心に選手全員で行なう「トロフィーリフト」。そこは神聖な場であり、部外者は立ち入れない。

 ところがトランプ氏は、チェルシーのリース・ジェームズ主将にトロフィーを手渡した後も、その場を立ち去らず、周囲を困惑させた。

「まさかトロフィーを掲げる時も壇上にいるとは思わなかったよ」

 決勝で2得点をあげたコール・パーマーは、呆れ気味にそう語っていた。

 2年後の28年にはロサンゼルスで五輪が開催される。なにしろ「国際法は必要ない」と、平然と言ってのける御仁である。いったい何をやらかすか。IOC関係者は戦々恐々としているに違いない。

初出=週刊漫画ゴラク8月7日発売号

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