【コラム】日韓サッカー検証 韓国有識者の論考【二宮清純 スポーツの嵐】

日本の歴史とサッカーの関係、韓国との違いとは?

 お隣の国からは、なるほどそう見えるのか。やや面映ゆい部分もあるが、うなづける点も少なくない。

 スペインの16年ぶり2度目の優勝で幕を閉じたサッカー北中米W杯。洪明甫(ホン・ミョンボ)監督率いる韓国代表は1次リーグで敗退し、洪監督は辞任に追い込まれた。大会終了後には、代表監督の選任プロセスの不透明さや協会のガバナンスの機能不全を問われた鄭夢奎(チョン・モンギュ)会長も、トップの座を辞した。

 翻って、日本代表は1次リーグを突破し、決勝トーナメント1回戦でW杯優勝5度のブラジルに惜敗したものの、海外メディアからは<ブラジルのような巨人を相手に堂々と渡り合い、後半アディショナルタイムまでセレソンをやきもきさせた>(イタリアのパルマ専門サイト)などと一定の評価を得た。

 そんな中、韓国中央日報(日本語版・8月16日)に権奇昌(クォン・ギチャン)なる人物が次のような論評を寄せた。

<サッカーは私たちの国家的自負心と集団的躍動性の象徴だ。世界をさらう韓流と先端産業で韓国は世界的な注目を浴びている。私たちの国家的自負心はいつになく高いが、ここに見合わない水準の低いサッカーに怒っているのだ。>

 いったい、どんな人物かと思って調べると、元ウクライナ大使だと判明した。外交官としての知見をいかし、国際情勢などについて、積極的に発言しているようだ。

 権氏の日本に対する見方は、以下に示すように極めて好意的だ。

<日本は明治時代に西欧化と緻密な長期計画を通じて近代国家に跳躍した。(中略)日本近代化の大物福沢諭吉が唱えた「脱亜入欧」はアジアを抜け出し列強の一員になるという思想的スローガンだった。日本サッカーもそのスローガンのようにアジアを超え世界最高水準に進入している。明治維新のエリートが西洋を学ぶのに驚くべき柔軟性を見せたように、日本サッカーも先進サッカーを学ぶのに同じ柔軟性を見せている。>

 韓国のパワーエリートにとって、隣の芝生は青く見えるのかもしれない。

 権氏の論評をなぞれば、日本におけるサッカーの明治維新はJリーグの創設ということになる。代表強化という名の富国強兵策だ。だが、それだけではない。

 Jリーグが掲げた百年構想のスローガンは<スポーツで、もっと、幸せな国へ。>である。断っておくが<もっと、強い国へ。>ではない。ぜひこの点も心に留めておいてもらいたいものだ。

初出=週刊漫画ゴラク9月4日発売号

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